メルカリにおけるHRBPのポジションとは
――HRBPと人事の関係も含め、御社の人事体制について教えていただけますか。
増田悠氏(以下、増田):今、僕らの所属するHRBPチームのメンバーは、それぞれ担当する事業部のVP(事業部長に相当)付きとして動いています。人事には他にも専門性を持ったチームがいくつかあり、採用を行うTA(Talent Acquisition)チーム、人事制度の設計を担当しているPlanningチーム、組織開発や人材開発などを行うO&TD(Organization / Talent Development)チーム、給与や労務周りを担当するPayroll/People Relationsチーム、ダイバーシティ施策や言語教育などを行うGPO(Global People Operations)チームなどがあります。
――なるほど。つまりHRBPの方々は、人事に所属しながら、事業部のトップの方とやりとりしている、というイメージで合っていますか。
増田:そうですね。僕らがカウンターパートとして日々やりとりをしているのは事業部のトップですが、レポートラインの上長はCHROです。
田井美可子氏(以下、田井):人事の各チームと連携を取りながら、事業側のニーズを満たすために動いているイメージですね。
――HRBPのみなさんと事業部のトップの方との間には、上下関係はないのでしょうか。
増田:評価者・被評価者の関係はできないようにしています。
――お二人の日頃のお仕事は?
田井:私はいま日本のメルカリのエンジニアリング組織のHRBPなので、主にやりとりをしているのはエンジニアのトップであるCTOやVPoEです。メンバーの採用から退職まで、すべての主要なタッチポイントに介入して、現場のニーズを満たす仕事をしています。
例えば、採用チームが戦略的な採用計画を立てられるように、現場にヒアリングをかけて、組織や事業のニーズを引き出しながら、人員計画を立てるのもHRBPの役割の1つです。
――お話を伺っていると、HRBPは各事業部における人事コンサルタントのように聞こえます。
増田:うーん……それはどうでしょう。そもそも、なぜ人事とは別にHRBPを立ち上げたのかというと、2018年は毎月50〜60人がジョインして組織が急成長を遂げている最中でしたので、いろいろなところに歪みが出てきていたんです。人事として現場に寄り添いたいけれど、人数が増えれば増えるほど、現場のニーズは多様化していく。
そこで採用・労務・制度・D&I(Diversity and Inclusion)といった機能によって、人事組織を分化していったのですが、現場からすると“組織づくりに関して誰に相談すればよいのか分からない”状態になっていきました。より現場に寄り添って、人事と事業部をつなぐ役割が必要だということで、今年の1月にHRBPが立ち上がりました。
特に、(田井)美可子さんの担当しているエンジニアの組織は、グローバルの割合が30〜35%と高くなっているので、多様なニーズが現場から上がってきます。人事の中の1つのファンクションだけで対処するのは難しく、いくつかのファンクションを束ねたり、時には俯瞰しながら「できるorできない」を判断したりする必要があります。
現場のニーズをただ吸い上げるだけではなく、「本質的には採用ではなく育成が課題なのではないか」といったように、人事の立場から現場に気づきを与えることもあります。僕らの感覚としては、その時々によって、コンサルティング会社と事業会社を行ったり来たりしているようなイメージですね。
組織長より~HRBPはこういう存在①
執行役員 VP of Business Operations 野辺一也氏
HRBPは、ビジネスサイドの組織・人材ニーズに対して伴走するイメージ。週次でHRBPと1on1を続けていますが、その中で求める人材像や組織におけるコミュニケーションといった課題についてサポートしてもらえたことは大きい。チームメンバーに対する理解度も高まりました。その上で組織内での異動可能性を検討できているため、チームメンバーに新たな活躍の場を提供する機会が増え、人材の活性化にもつながりました。
また、彼らは上長として把握しにくいチームメンバー、マネジャー層の状況を多面的に把握しており、より客観性をもって一人ひとりにフィードバック、成長目標設定を行えるようにしてくれています。
人事制度や評価制度などの変更・導入時においても、目的や変更点などを前もってHRBPに共有してもらうことで、マネジメントとして変更・導入をサポートしやすくなりました。運用上における課題なども即時に知ることができ、HRと良好なフィードバックサイクルが生まれていると感じています。