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エンジニアの心をつかむには技術者を前に立てる
――これから優れた海外人材を採用したいと考えている日本企業に、成功のポイントをアドバイスしていただけますか。
マルコ・スリマ氏(以下、スリマ):当社では最初の面接を技術チームが担当しますが、LinkedInなどに投稿する場合も、ジョブディスクリプション(職務記述書)は人事担当者ではなく現場のエンジニアが書きます。現場のニーズをわかりやすく示し、「この職務に就いたらこの仕事をやってもらう必要がある」ということを、はっきりと打ち出すことが大事です。
ここでのポイントは「シンプルにはっきりと書くこと」「バブリーな話を書かないこと」。特にBtoBの会社では、美辞麗句よりもニーズだけを簡潔かつ正確に伝えるほうが大切です。そのためにもAIのような最先端の分野では、本当に技術をわかっている現場のエンジニアを前面に立てていくことが、応募人材にとっても魅力的なアプローチに映ります。
――海外人材と面接をする場合に、特に注意すべき点を教えてください。
スリマ:まず、相手を安心させること。日本で働いたことがない人は、どんな国でどんな職場なのか見当もつきません。それだけに安心感が何より大切です。同様に、安定している会社であることをきちんと伝える。そのために聞かれた質問にはどれも丁寧に答えて、こちらのメッセージを前面に押し出す。「スタートアップだから、まだいろいろ決まってなくて……」などと曖昧に答えてはだめで、会社のビジョンから何から明確に伝えることが必須です。
また、ティアゴ(ラマル氏)のようなすでに社内で活躍している海外人材を連れてきて、一緒に話してもらうのも、相手に安心感を持ってもらうためにはとても効果的です。
あと、面接で非常に大事なのが、「日本が好き」「東京が好き」かどうかを見極めることですね。そうでないと、いざ来てからなじめないというのはお互いに困る。当社でもこれまで入社したほぼ全員、日本が好き、もしくは日本に来た経験がある人でした。ほとんど何も知らないまま来てくれたティアゴは、むしろ例外中の例外です。
――テクノロジー以外で海外の技術人材が、「この会社で働いてみたい」と思ってくれる要素にはどんなものがありますか。
スリマ:まず企業としてのビジョン、事業目的、獲得目標といった大きな枠組みは、技術と同じくらいに、応募者のモチベーションに大きく関わってきます。ここをはっきりと伝えられないと厳しいですね。
オフィスのスタイルや場所も大事です。以前、当社のオフィスは東京・代官山のファッションブティックの中にあって、ちょっと企業の事務所には見えないところが面白かったのです。高層のオフィスビルの中に移転した現在も、社内のインテリアや空間づくりにはスタイリッシュな雰囲気をできるだけ心がけています。
あとは、やはり人ですね。日本人や日本の文化とフィフティ・フィフティ(対等)な関係を保って働けること。外国人と日本人の両方がいる当社でも、お互いに対等な立場で働けることが非常に重要な要件になっています。