経験の中から自分の人生・キャリアを考えて切り拓く力を育む
――お二人の抱える課題感や、出会った経緯などについてお聞かせいただけますか。
善浪広行氏(以下、善浪):組織に長くいたこともあり、社会の変化とともに企業や社会が発展していくためには、「自身のキャリアを自分で考える人」をもっと増やす必要があると考えていました。その中で、若くして子どもたちに「自分の人生を切り拓くこと」の大切さを伝えようと活動されている仁禮さんを知り、大変興味を惹かれました。知人を通じて連絡をとったところ、翌週にはお会いすることになり、フットワークの軽さに驚かされました。
仁禮彩香氏(以下、仁禮):私がうれしかったのは、事業内容に興味を持っていただき、強く共感してくださったことです。学生で起業すると支援してくださる方も多く、それはそれでありがたいことなのですが、それ以上に「どんなことをやっているか」に関心を持っていただけたことに感激しました。
私が教育に興味を持つようになったのは、インターナショナルな幼稚園から公立の小学校に通うことになり、そこで教育の“差分”を実感したことがきっかけです。中学2年の時に立ち上げた会社も教育系だったのですが、起業して8年、さらにその前からも教育の差分を意識し続けてきたことで、少しずつ本質が見えるようになってきたように思います。
善浪:私も根っこの経験や考え方は近いかもしれません。私も修学旅行のプランを自分たちで立てるような学校環境で自由に育ちました。また、縁があってオラクルに入社した後も、営業や新規事業、ビジネス企画などいろんな経験をさせてもらい、その中で「自分でキャリアは考えなければ」と考えるようになりました。
仁禮:そう、私たちに共通するのは、「自分で人生を考えることが大切」というシンプルな価値観なんですよね。「TimeLeapアカデミー」では“オンライン起業家プログラム”としていますが、最終的に提供したい本質的な価値は起業家になることではありません。自分のアイデアをチームと一緒に形にしてアウトプットし、声やお金など他者からのフィードバックを受けて学びを深めていくという“起業家的な体験”を通じて、「自分の人生を切り拓くための力を育むこと」が目的です。
プログラムではすべてが実践から学ぶことになります。まず「自己認識」として“自分は何をすべきか”を考え、「社会接続」によって他者に触れて視野を広げ、「才能発揮」をすることで自信を育み、他者と協力し合う楽しさを知る――という流れです。日本の子どもたちの自己肯定感が低い傾向があるといわれていますが、その背景には日本の教育の構造として、自分の存在意義を感じる機会が得られにくいからと考えています。そこで、TimeLeapではそうした機会を補完したいと思っているんです。
善浪:TimeLeapの手法を、社会人の目線から見ると「早くから社会に揉まれることの重要性」を改めて実感しますね。私の事業本部では企業向けの経営管理ソリューションを開発・販売しているのですが、経営の実感がない人がそれを売るのはすごく難しいんです。でも自分でプロジェクトを回して、物事の立て付けやマネタイズの方法などを考えた経験があれば実感が生まれ、社内も他者も説得できるようになります。同じように、自分で事業を回すということを子どもの頃から経験する機会が多ければ、大人になったときに自立したビジネスパーソンが増えるんじゃないかという期待があります。
仁禮:その意味で、私たちのプログラムにリアリティがあるとしたら、一つは「お金」を重視していることだと思います。現実社会では、自分が社会に提供するモノをお金に変えて、生活全般を回しているという資本主義の枠組みの中にあります。人生をドライブする重要な存在なのに、なぜか日本の教育はお金を隠したがる。でも、自分が行ったことが社会に評価されてお金になって、服や食べ物になるといったことを、子どもが肌感覚で得られるのは大切だと思うんですよ。そうした学校が教えてくれない部分をTimeLeapが補えればと思っています。