モデレーター
大野 耕平(おおの こうへい)氏
ブライトコーブ株式会社 Marketing Manager
大手独立系Slerにてソリューション営業を10年経験後、2016年にブライトコーブ入社。3年間の営業職を経験した後、19年より現職。様々な角度で企業における動画活用の啓蒙に注力し、様々なイベントやメディア取材で講演をしている。また、日本における大企業内での社内広報や従業員エンゲージメントにおける動画活用の提案も多数実施している
パネリスト
相浦 誠(あいうら まこと)氏
株式会社FEEL CONNECTION 経営管理部システムグループ マネージャー
新卒で金融系システムの開発を行うシステムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、情報系システムの導入を行うSIerへ入社、BI・Bigdataといったデータ活用を推進するプロジェクトを担当。2017年、暗闇バイクエクササイズ『FEELCYCLE』 を展開する株式会社FEEL CONNECTIONに入社。プレイングマネージャーとして、社内外のシステム開発やデータ活用を担当し、事業利益の創出だけでなく、従業員エンゲージメント向上を目的としたDXの推進を行っている。
磯田 亜美(いそだ あみ)氏
株式会社FEEL CONNECTION FEEL ACADEMYグループ リーダー
新卒で人材紹介・派遣会社に入社。個人売上過去最高記録や管理者としてチーム売上過去最高記録を達成。2019年、株式会社FEEL CONNECTIONに入社。教育部門FEEL ACADEMYを立ち上げ、インストラクターの店舗業務の研修だけでなく、エンゲージメント向上の推進を行っている。
本記事は、2021年2月25日に開催されたオンラインイベント「HRzine Day 2021 Winter」でのセッション「~動画で従業員エンゲージメントを高める~ FEEL CONNECTIONが実践するニューノーマル時代のHR施策」をレポートするものです。
重要なメッセージをどう従業員に届けるか
本セッションの冒頭で、ブライトコーブの大野氏より同社の動画配信プラットフォームの紹介がなされた。米国ボストンに本社を置き、現在は日本をはじめ13か国に展開しており、世界中のトラフィックの約2%を占める。日本でもテレビ局などのメディア、スポーツ・ライブ配信をはじめ、近年ではEコマースやEラーニングなどにも使われており、特に近年増えてきているのが社内動画配信だという。
その背景について大野氏は「飲食業などデスクレスワーカーが増え、その対応が必要になりつつある。また、多拠点化が進み、リモートワークが普及し、さらに4Gが普及しきって5G時代に突入しようとしており、動画制作費も大幅に低下したことが大きい」と語る。
そうしたブライトコーブが提供する社内動画配信サービスを導入しているのが、フィットネス事業のFEELCYCLEなどを全国41店舗で展開するFEEL CONNECTIONだ。“暗闇でバイクを漕ぎながら汗を流す”同社の暗闇フィットネスは、店舗のほか、大きな会場を貸し切って開催。過去には千葉・幕張メッセで1万人を集めたという。また、家庭用エクササイズバイク(FEEL ANYWHERE)の開発・提供も開始した。
FEEL CONNECTIONで社内教育を担当するFEEL ACADEMYで、グループリーダーを務める磯田氏は、新入社員および社員の研修、インストラクターのテクニカルスキル以外の研修など、従業員エンゲージメントを高めるための施策企画・実行を担当している。
「Let Your Life Be More Brilliant Through Creation of New Lifestyle(新しいライフスタイルの創造を通じて、関わる全ての人を輝かせよう)」を企業理念とし、「業務遂行能力」「対人関係能力」「物事の本質を見極める能力」「仕事に取り組む姿勢」「心身の健康」の5要素を軸として評価を行っており、磯田氏としても、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、「働きがい」を感じてもらえるような教育・組織づくりに取り組んでいるという。
例えば、優秀店舗のアワードや報奨旅行、社員研修のような学びの場などリアルの場を活用した関係づくりを行う一方で、自律性を重んじ、社員の提案による新店舗の開設や、アパレル事業、フード事業などの新規事業なども積極的に取り組んできた。
グループウェアも導入した。しかし、ワークフローに特化されていたほか、グループ会社と共用だったこともあり、重要なメッセージが届きにくかったのが難点だった。
そこで、Salesforce Platformを導入し、ワークフローに加え、チャット機能など現場とバックオフィスのデータを一元管理し、メッセージが伝わるような環境へと整備。ポータル画面では業務連絡だけでなく、経営層からのメッセージや、コールセンターに届いたお客様からの感謝メッセージなどを社内で共有できるようになった。
このような従業員エンゲージメントの醸成を目的としたシステムの開発・管理を担うシステムグループでマネージャーを務めるFEEL CONNECTIONの相浦氏は、「お客様からの感謝メッセージには、感動のあまり涙を流すスタッフもいるほどだった。他にも報奨での海外旅行のレポートや、トップインストラクターの体験談なども掲載しており、当初は本部からのトップダウンの共有を第一の目的としていたが、現在は横のつながりの共有が増えてきた。それによって他の店舗やスタッフがどんな取り組みをしているのか、情報共有が活発化し、それがスタッフのモチベーションにつながるようになった」と評した。
動画アップもしやすい「スマホ+動画」システムで従業員に発信
Salesforce Platformによって「見るものが分かる場所」が用意されたFEEL CONNECTION。しかし、長い文章や硬い文章、またPCを開いて読むタイミングがなかなか合わないなど、テキストのコミュニケーションには限界があった。
また、新型コロナウイルスの直撃により、1か月間の休業を余儀なくされ、その間は研修やミーティングも一切できなくなってしまった。9割が店舗での業務だったこともあり、エリアマネージャーや店長などからは自発的に「空いた時間をスキルアップに使おう」という声が上がった。ところが、社外からは社内の研修マニュアルが見られないなど、学ぶ環境が十分に提供されていなかった。
そこで、磯田氏が中心となり、社外でも各自のスマートフォンを介して手軽に研修が受けられる動画配信システムを企画。配信システムには、ブライトコーブの「Brightcove Engage」を採用した。とにかく早く、できるだけ簡単に、しかもセキュリティがしっかりしていること、そして動画のアップロードがしやすいこと――それらの要件の下、短期間で構築がかなったという。
さらに、FEEL CONNECTIONの社員だけが見られる動画アプリを開発し、新しい動画が上がったら必ず閲覧してもらえるように、全社員のスマートフォンにプッシュ通知を行うようにした。その結果、テキストによるメッセージ以上に閲覧率が上がり、さらに動画による説明で、体の動きや声の表現などを分かりやすく伝えられるようになった。
「声の大きさや低さ、体の位置や使い方など、言葉で伝えにくいものも、動画ならばひと目で分かる。当社は若いスタッフが多いこともあって、YouTubeやInstagramの動画などを見慣れている人が多く、一気に理解が広がったと感じている。それでもやはり自分の関心がなければ見てもらうことは難しい。すぐにPCを開ける環境でないこともあり、まずは見やすい環境を用意することが大事と考え、アプリを導入した」(相浦氏)
さらに、相浦氏は「動画配信を継続的に運営していくためには、閲覧する側だけでなく動画を配信する側にも“簡便さ”が重要事項であることは間違いない」と付け加えた。実は、以前にも動画配信システムを企画し導入したことがあったが、自社内にシステム担当者が不在で十分な運用ができず、自然と廃れてしまったのだという。それが今回導入したブライトコーブの動画配信システムでは、インターフェイスが分かりやすく、誰もが容易に動画の更新ができる。また、動画制作自体も家庭用ビデオカメラに加え、現在はスマートフォンで撮影するなど、簡便に扱える環境が整ってきたことで、快適な自走運営が可能になった。
磯田氏も、設計書や台本を作って上長や経営層に確認をとり、必要に応じてコンテも作成して、撮影はもちろん編集作業まで自分で行っているという。本セッションでは、自作したという研修動画を披露した。インストラクションのテクニカルスキルや、店舗の清掃オペレーションマニュアルなど、テーマはさまざま。セミナーの場合には飽きさせないように、紙を用意してワークを行いながら受講してもらうなどの工夫もしている。
磯田氏は「専門知識を持たない私がこうしたことができるのも、感覚的に使えるインターフェイスがあったから」と評し、「他のメンバーもすぐになじんで使っていた」と語った。
動画でのコミュニケーションで従業員エンゲージメントの復活を
こうしてFEEL CONNECTIONの社内動画はかなり見られているというが、はたしてその効果は具体的に出ているのだろうか。
同社では、配信後にどの動画が何回、何人に閲覧されているか、そして、ある動画を見た人の中で、別の動画をどれくらいの割合で見るのかなどを集計。また、実際に社員アンケートやヒアリングを行い、「どのようにしたら見やすいのか」「どのタイミングで見ているのか」などを聞き、定性的な評価としている。
磯田氏は「そうした声や評価を反映させて動画を作成している。飽きられないように、興味を持ってもらえるように。その試行錯誤が伝わってか、配信している動画の視聴率が上がり、従業員エンゲージメント自体も上がってきたように感じる」と語った。
世の中の実勢は真逆だ。大野氏は「一般的にコロナ禍によって会社への帰属意識が落ちている」といい、70%の従業員が会社へのエンゲージメントを毎年低下させていること、44%の従業員は複雑なイントラによりエンゲージメントを低下させていること、そして46%のコミュニケーションリーダーは情報伝達に課題を感じていることを紹介した。
さらに、「専用のデスクトップPCを所有していないデスクレスワーカーは全労働力の80%を占め、特に小売業界においては世界で4億9700万人になるといわれているが、そこに対して全情報システム予算の1%しか使用されていない」と指摘。「そうした従業員一人ひとりに対するコミュニケーションをどうするか。そこに動画という、的確な情報を伝え、感情に訴え、人と人との結び付きを強くしてくれる手法をとることで、従業員エンゲージメントを高めることが可能になるのではないか」と語った。
そして、従業員との距離を縮めるアプリとしてBrightcove Engageを改めて紹介し、「アプリはもちろんPCでも閲覧が可能となっている。ワンストップでの提供がかなうので、ぜひ興味がある方は問い合わせをしてほしい」と語り、まとめの言葉とした。