ユウクリは、同社が運営する調査機関「クリエイターワークス研究所」において、やはり同社が運営する「美大芸大就活ナビ」を利用する2022年卒業の美大生・芸大生(以下、美術系学生)117名を対象に、就職活動状況を把握するアンケートを実施し、結果を発表した。調査期間は2021年6月1日~6月30日。
この調査結果を受けて、同社は以下のように述べている。
リクルートキャリアが行う「就活プロセス調書」では、6月1日時点の大学生の就職内定率は「68.5%」となり、この結果はコロナ禍前の2020年卒、いわゆる売り手市場時期の結果とほぼ同じ水準となった。
一方、今回のアンケートでは、6月末時点の内定率は「21.1%」だった。昨年6月に行った同様のアンケートと比較すると、内定率は+10.7ポイントの結果だが、リクルートキャリアが発表する学生内定率とは大きな差が生じている。
美術系学生の内定率が伸び悩んだ理由の一つとして、美術系学生の希望職種が挙げられる。次に示すグラフは、22年卒美術系学生の「希望職種」と「企業選択における重視項目」の回答結果である。最も希望の高い職種がグラフィックデザイナー、ついでその他デザイナー、企画・マーケ・広報の順となっている(その他デザイナーの内訳:プロダクトデザイナー、ファッションデザイナーなど)。また、企業選択では業務内容や職種を重視する割合が高く、多くの美術系学生は「入社後に自身がどのような仕事を行い、どのような媒体に携わるのか」を具体的に考えている。
美術系学生は将来のビジョンを鮮明にイメージする能力がある半面、希望が明確だからこそ、自身の選択肢を狭めているという見方もできてしまう。
22年卒美術系学生の6月末までのエントリー社数を見ると、1~5社へのエントリーがボリュームゾーンとなっている。しかし、21年卒の就活実態調査でのエントリー平均社数は20.5社となっており、22年卒学生は行動量がかなり少ない傾向にある。
「22年卒は売り手市場が再開した」という状況を鑑みても、6月末までの就職活動では志望企業を絞りすぎている、もしくは行動量が少なすぎたため、一般学生と比較して内定率に差が生じてしまったのではないかと考えられる。
また、学生人気の高い広告・出版業界は、業界全体的に苦しい状況が続いている。帝国データバンクが発表する業界天気図では、テレビ広告の需要減により広告代理店は曇り、出版・広告も雷雨の見立てとなっている。
これは、コロナ禍による一時的な状況悪化ではなく、社会的なDX化やデジタルコンテンツ推進により、今後も情勢は厳しくあるとともに、人材採用自体が大きく見直されていることも影響している。業界は現在、改革・改変に取り組んでおり、それに伴いクリエイターに求められる能力やスキルも変化している。就職活動ではその点も理解した上で、引き続き志望企業の選考準備をするとともに、選考する業界や職種の範囲を広げる必要もあるだろう。