健康経営3つのステップと2つの失敗例
次に、梅田氏は健康経営の3ステップを紹介した。
ファーストステップである「健康経営1.0」は、法令遵守の徹底である。健康診断の受診率を100%にしたり、従業員数50名以上の企業ではストレスチェックを実施したりする。他にも面談を希望する人の声を聞き取る仕組みができているかなど、安全配慮義務としての法令遵守を徹底する。
続く「健康経営2.0」では、データ収集/評価を行う。たとえ健康診断の受診率が100%であったとしても、その結果(データ)をただ保管しておくだけでは意味がない。データがあるなら、それを分析して、現場の把握や改善に生かす仕組みをつくらなければならない。
最後のステップとなる「健康経営3.0」では、人事戦略への貢献を目指す。分析した健康情報を人事戦略に落とし込むのだ。その結果、従業員の生産性向上や従業員満足度の向上を図ることで、ウェルビーイングの実現につなげていく。
「この中で最大の山場となるのが『健康経営2.0 データ収集/評価』です」と語る梅田氏は、2つの失敗例を挙げた。
<失敗例①>施策よりも事務作業が中心に
経営層からのトップダウンで健康経営の取り組みを始めた場合での失敗例である。一般的に健康経営はトップダウンで臨むのがよいとされているため、決して悪いことではない。しかし、経営層が現場を考慮せずに「とにかくやれ」と命じるのは危険だ。健康管理業務というのは、健康経営に取り組まずとも、やるべきことが山積みである。ただでさえ事務作業に追われている中で、健康経営の取り組みを課せば、現場の業務が回らなくなるのは必然だ。
「健康経営をやりたい気持ちは分かりますが、これでは逆に担当者の健康を害する結果を招いてしまい、望ましい姿とはいえません」(梅田氏)
<失敗例②>データはあるが分析できない
昨今、リモートワークが増えていることもあり、半ば無理やりペーパーレス化を進めてきた企業も少なくない。その場合、「健康診断の結果をPDFにしてみました」「ストレスチェックは専用のシステムを使っています」「産業医の面談はExcelで管理しています」といったように、データが分断されて分析できない状態になってしまう。
「健康経営2.0では、データを分析できる体制を整えることが重要。とにかく紙をなくせばよいというわけではありません」(梅田氏)