梅田 翔五(うめだ しょうご)氏
株式会社iCARE Sales&Marketing部 セールスマネージャー
健康経営アドバイザー
第1種衛生管理者
大手製薬企業、大手人材サービス企業を経て、iCAREにジョイン。健康管理システム『Carely』の営業活動を行うと同時に企業の健康経営や健康管理体制の相談に乗っている。形だけの健康経営ではなく、本質的かつ効率的な健康経営を企業の皆さんと実現していきたい!と日々邁進。
多様化する現代のウェルビーイングをどう実現するか
終身雇用・年功序列・福利厚生のあった、かつての古き良き日本企業は、ウェルビーイングの先駆者であったといえる。ウェルビーイングは「心と体の健康の先にある幸福」という意味で使われるが、当時の日本では大きくて安定した会社で福利厚生も提供してもらうのが幸福だ、という考え方が根付いていた。
しかし、時が経ち、パーソル総合研究所の行った「福利厚生実態調査2020」によると、福利厚生の廃止を検討している企業は23.1%に上り、コスト削減の対象として考えられている実態が浮かび上がった。
その理由について梅田氏は「従業員の価値観が多様化しているからだ」と指摘する。厚生労働省が発表した「平成20年版 労働経済の分析」では、新入社員の会社の選択理由の今と昔が比較されている。1987年と2007年を比較して、最も差の開いた項目は、「会社の将来性を考えて」と「仕事がおもしろいから」の2つ。
1987年には会社の将来性を重視していた人が20%を超えていたが、2007年には10%を切るまでに半減している。一方、仕事のおもしろさを重視していた人は、1987年には10%を下回っていたところから、2007年には20%を超えて倍増しているのだ。また、「自分の能力、個性が生かせるから」という仕事の根源的な項目を除き、選択理由が分散している傾向も見て取れる。
これらのことから、「従業員が会社に求めるものが多様化している今、画一的な福利厚生の提供ではウェルビーイングを実現することはできない」と梅田氏は結論づけた。
では、福利厚生に依存せずに、従業員のウェルビーイングを追求するには、どうすればよいのだろうか。その答えとなるのが昨今、話題の「健康経営」である。梅田氏は健康経営の役割を次のようにまとめた。
<健康経営の役割>
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①従業員視点
- 従業員体験の追求(従業員満足度:ES)
- 従業員貢献の最大化
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②経営者視点
- 経営戦略における生産性の追求
- 事業戦略の支援、加速化
「ただ従業員のフィジカルな健康を守るだけでなく、メンタルな健康も含めて複合的に実現していくことで、生産性の向上が実現する。『従業員体験の向上』と『生産性の向上』の両立を目指すのが、今の時代に求められている健康経営なのです」(梅田氏)
健康経営3つのステップと2つの失敗例
次に、梅田氏は健康経営の3ステップを紹介した。
ファーストステップである「健康経営1.0」は、法令遵守の徹底である。健康診断の受診率を100%にしたり、従業員数50名以上の企業ではストレスチェックを実施したりする。他にも面談を希望する人の声を聞き取る仕組みができているかなど、安全配慮義務としての法令遵守を徹底する。
続く「健康経営2.0」では、データ収集/評価を行う。たとえ健康診断の受診率が100%であったとしても、その結果(データ)をただ保管しておくだけでは意味がない。データがあるなら、それを分析して、現場の把握や改善に生かす仕組みをつくらなければならない。
最後のステップとなる「健康経営3.0」では、人事戦略への貢献を目指す。分析した健康情報を人事戦略に落とし込むのだ。その結果、従業員の生産性向上や従業員満足度の向上を図ることで、ウェルビーイングの実現につなげていく。
「この中で最大の山場となるのが『健康経営2.0 データ収集/評価』です」と語る梅田氏は、2つの失敗例を挙げた。
<失敗例①>施策よりも事務作業が中心に
経営層からのトップダウンで健康経営の取り組みを始めた場合での失敗例である。一般的に健康経営はトップダウンで臨むのがよいとされているため、決して悪いことではない。しかし、経営層が現場を考慮せずに「とにかくやれ」と命じるのは危険だ。健康管理業務というのは、健康経営に取り組まずとも、やるべきことが山積みである。ただでさえ事務作業に追われている中で、健康経営の取り組みを課せば、現場の業務が回らなくなるのは必然だ。
「健康経営をやりたい気持ちは分かりますが、これでは逆に担当者の健康を害する結果を招いてしまい、望ましい姿とはいえません」(梅田氏)
<失敗例②>データはあるが分析できない
昨今、リモートワークが増えていることもあり、半ば無理やりペーパーレス化を進めてきた企業も少なくない。その場合、「健康診断の結果をPDFにしてみました」「ストレスチェックは専用のシステムを使っています」「産業医の面談はExcelで管理しています」といったように、データが分断されて分析できない状態になってしまう。
「健康経営2.0では、データを分析できる体制を整えることが重要。とにかく紙をなくせばよいというわけではありません」(梅田氏)
適切なデータ化で健康経営を推進する「Carely」
先に紹介したような失敗をしないよう、業務効率化を図りながら健康情報のデジタル化を実現するのがiCAREの健康管理システム「Carely(ケアリィ)」である。Carelyでは何ができるのか。その活用事例をいくつか見ていこう。
以下は、ある企業のストレスチェックの偏差値を示したものだ。右にある「ワーク・エンゲージメント」と「仕事の満足度」は、それぞれ67と69で偏差値が高い。ところが、「仕事の負荷」は数字の背景が赤く染まっていることから、業務量が多すぎることが分かる。業務量の多さが仕事の満足度につながっているとも考えられるため、一概に悪いとはいえないが、この状態が慢性的に続くと、過重労働者が増える可能性が非常に高くなる。要注意項目であるといえるのだ。
他にもCarelyでは、厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」について、各質問のそれぞれの回答者数や平均値、偏差値を可視化できる。
さらに細かく、「生産性」と「睡眠」、「仕事の負荷」と「疲労感」といった相関が高そうな項目をクロス分析することも可能だ。
「従業員300人、4拠点の企業で調べた結果、紙やExcelを使っていた頃とCarelyを導入してからを比べると、75%の業務時間を削減できたそうです。また、それまで使用していた健康管理サービスをCarelyに集約したところ、コストも86%削減できたという声をいただいています。ぜひCarelyで効率よく効果的に健康経営を進めていただければ」と語り、梅田氏はセッションを締めくくった。