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特別寄稿《調査・分析》| 人的資本管理

ジョブ型時代のキャリア自律とタレントマネジメント 鍵は「個人選択型HRM」の活用にあり

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 労働者の価値観の多様化、労働力人口の減少、キャリア自律の必要性、ジョブ型の導入、働き方改革など、組織・人事マネジメントの潮流は、個人が仕事、働き方、キャリアを選択する場面を増やす方向にあります。それならば、個人にとって魅力的であり、組織にとっても有益な選択肢を社内に多くデザインすることが、企業人事がとるべき次の一手となりそうです。そこで、リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所では、一つの試論として、「個人選択型HRM(人的資源管理:Human Resource Management)」へのシフトについて検証しました。個人選択型のHRMを「仕事、働き方、キャリアに関する従業員による主体的な選択の機会を増やすような施策群による人材マネジメント」と定義して調査(「個人選択型HRMに関する実態調査2022」)を行い、296社の人事責任者より回答を得ました。本稿では、この調査から見いだされた示唆を、3点にまとめてお伝えします。

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<図表1>「個人選択型HRMに関する実態調査2022」調査概要
<図表1>「個人選択型HRMに関する実態調査2022」調査概要
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導入・活用のポイント①
個人選択型HRMは、個を尊重する明確なポリシーのもとでこそ機能する

 仕事、働き方、キャリアに関する従業員による主体的な選択の機会を増やすような23の施策をリストにし、導入・活用状況と導入検討状況についての回答を示したものが図表2です。

<図表2> 個人選択型23施策の導入・活用状況<br/>貴社における施策への取り組み状況をお答えください。<単一回答/n=296/%>
<図表2> 個人選択型23施策の導入・活用状況
貴社における施策への取り組み状況をお答えください。<単一回答/n=296/%>
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 調査対象とした23施策のうち、「2. 自己申告制度(従業員が人事担当部署に直接、異動やキャリア形成への希望を伝える制度」や「20. 上司とのキャリア相談(1on1ミーティングでの会話などを含む)」などは、導入率が高いものの、対象者による施策の活用が不十分だと考えられています。個人の希望を聞く場面を増やすだけでは、個人選択型HRMが機能していかないことが示唆されます。

 その改善策とするためか、「6. 複線型人事制度」や「23. メンターやカウンセラーとのキャリア相談」などの今後の導入意向が高く、社内キャリアに選択肢を増やし、個人選択を支援する相談機能を拡充する様子がうかがえました。

 人事の制度や施策は、経営戦略に合致した明確な目的意識と、目的に沿った複数の施策間の整合性がそろってこそ機能するものです。個人選択型HRMの場合には、個人の選択や生き方を尊重し、個を生かそうとするマネジメント側の本気が問われます。

 調査結果においても、企業が従業員にキャリア自律を求める度合いが強いほど(図表3)、図表2で提示した個人選択型HRMの諸施策が多く導入されていました。「導入しており、制度対象者に一定以上活用されている」施策の数に限定して平均値を算出した場合も、同様の傾向がみられました。

<図表3>キャリア自律を求める度合いと個人選択型施策の導入数(年代別)(n=296)
<図表3>キャリア自律を求める度合いと個人選択型施策の導入数(年代別)(n=296)
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この記事の著者

藤澤 理恵(フジサワ リエ)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 主任研究員。人事制度設計のコンサルティングや、研修開発、組織調査などに従事したのち現職。 東京都立大学大学院 社会科学研究科 経営学専攻にて、2021年博士号授与。同大学博士研究員。 “ビジネス”と”ソーシャル”のあいだの「越境」、仕事...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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