職能等級資格制度は限界に来ている
日本で広く普及をみてきた職能等級資格制度は、技術力も組織力も併せ持つゼネラリストを育成する思想を基礎に置いて人事評価を実施する制度です。
ところが、中小企業では、これらを兼ね備えた優秀な人材を採用することが難しく、「技術力は突出しているけれど、組織管理力はイマイチ」だったり、「組織管理力は高く仲間を輝かせることについてはピカイチだけど、専門スキルは相対的に低い」だったり、いわば「デコボコ人材の集合体」であるというのが現実です。
そんな事情の違いがあるにもかかわらず、中小企業も、とかく大企業の論理で作られた人事評価制度をそのまま取り入れようとしてきました。これではうまく機能するはずがありません。
こんな、現場で明らかに見えている課題に対して何とか手を打たなければならない……そんな使命感に駆られて開発されたのが「マトリクス人財育成制度」です。
タテヨコ2軸を統合しない格付けが画期的
マトリクス人財育成制度は、従来の1軸で評価格付けを行う職能資格制度の概念から脱却し、タテ軸に技術力(スペシャリティ)評価軸、ヨコ軸に組織力(マネジメント)評価軸を置いて、2軸で別個に個人の能力や役割を評価格付けする仕組みの制度です。タテ軸は、技術的職務遂行能力を評価するステージと技術的職務発揮度合いを評価するレベルの2要素で構成されます。
格付け等級は、タテ・ヨコのマトリクス表がクロスする「Lポジション」とします。1軸でゼネラリストに育っていくという思想から脱却して、タテヨコ縦横無尽に本人の特性を活かして成長を促し、会社に貢献しつつ個々人の働きがいも高めていける制度思想になっています。
従来も、技術力と組織能力を別個に評価するという制度はありましたが、単一の階層・格付けに収れんさせてしまうのが通例でした。しかしそれでは、「なぜアイツは、自分より技術力が高くないのに自分より先に昇格したんだ?」といったことへの納得性の持てる説明はしづらいし、また、技術力で卓越しているが対人能力は高くないというような人材への納得のいく処遇がしづらい。デコボコ人材の集合体であり、こうした悩みを抱えることの多い中小企業には、別の答えが必要でした。
そこに、マトリクス人財育成制度は明快な答えをもたらしました。そう、評価した等級を1軸で表現することへの固執から解放されればよいのです。