ラーニングエージェンシーとラーニングイノベーション総合研究所は、入社前後のギャップに関する意識調査を実施し、その結果を発表した。今回は、離職意向の有無についての属性で分析した調査結果を公表する。
「あなたの転職経験や意向について教えてください」という問いに対し、「転職経験なし今後予定あり」「転職経験あり今後予定あり」と回答した人を「離職意向あり」とし、「転職経験なし今後予定なし」「転職経験あり今後予定なし」と回答した人を「離職意向なし」と設定している。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査対象:22~34歳の社会人1年目である就労者
- 調査時期:2022年7月22日~7月25日
- 調査方法:調査会社によるインターネット調査
- サンプル数:300人(離職意向あり:84人、離職意向なし:171人、その他:45人)
離職意向ありは、ない人よりも入社時のギャップを感じる割合が高く、約10ポイントの差
同調査では、社会人1年目(以下、新人)に対し、生活リズムや社会人としてのマナー、仕事に関すること、上司との関わりなど、11個の項目(以下、11のギャップ項目)について、入社前後にギャップを感じたか質問した。その結果を、離職意向がある新人とない新人でどのような違いがあるか比較した。
結果、離職意向のある新人で最もギャップを感じた項目は、「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得(82.1%)」だった。次に、「社会人の基礎的なマナーの習得(72.6%)」「配属先(71.4%)」となった。
一方、離職意向のない新人の感じたギャップは、「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得(64.9%)」が離職意向ありと同様に最も高くなった。2位以降は「上司から仕事のアドバイス(63.7%)」「上司への悩み相談(57.9%)」と上司との関係性における項目が上位となった。
全ての項目で離職意向のある新人が、ない新人を上回る結果となり、11のギャップ項目の平均値を比較したところ、離職意向のある新人では平均65.3%がギャップを感じているのに対し、離職意向のない新人では平均55.7%となり、約10ポイントの差に。離職意向のある人が、離職意向のない人よりも、入社前後にギャップを感じていることが明らかとなった。(図1)
離職意向ありがネガティブに感じるギャップの上位は「仕事の難易度」「生活リズムや考え方」
ここからは、離職意向のある新人に着目し、感じているギャップがネガティブなものなのか、ポジティブなものなのか、詳細を見ていく。まずは、図1からネガティブに感じる回答を抽出し比較したところ、「仕事の難易度」が最多で52.4%の人が「想定よりもとても難しい・やや難しい」と回答した。次に「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得」が52.3%、「社会人の基礎的なマナーの習得」が50.0%と、3位までは半数以上の新人が「想定よりもとても難しい・やや難しい」と回答した。(図2)
次に、ポジティブに感じる回答を抽出し比較したところ、「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得」で「想定よりもとても簡単・やや簡単」と回答した割合が29.7%となった。次に「配属先」が「希望以上によい・希望通り」と回答した割合が26.2%、「上司とのコミュニケーション」が「想定よりとてもフランクで話しやすい・ややフランクで話しやすい」が25.0%となった。(図3)
続いて、離職意向のある新人へ、11のギャップ項目以外にも職場の雰囲気・文化について入社前後でどのようなギャップがあったか複数選択で質問したところ、「想定していたより意見が言いづらい風通しの悪い職場だった」が最も高く25.0%となった。2位以降は「想定したより、自由度が高かった(20.2%)」「想定していたより明るい雰囲気だった(17.9%)」「想定していたより熱気にあふれる雰囲気だった(17.9%)」が続いた。職場の雰囲気・文化については、ネガティブなギャップだけではなく、ポジティブなギャップも感じている結果となった。(図4)
離職意向ありが最も「会社を辞めたくなった」と感じたギャップは「社会人の生活リズムや考え方の習得」
ここからは、離職意向のある新人が、11のギャップ項目をそれぞれどのように捉えたかを調査した。まずは「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識)の習得」や「社会人の基礎的なマナーの習得」でギャップを感じた新人のうち、離職意向のある新人はそのギャップをどのように捉えているか見ていく。(図5)
結果、どちらの項目も「会社を辞めたくなった」「不安に感じた」「大変だと感じた」「落ち込んだ」などのマイナスの感情が上位を占めた。特に、「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識)の習得」のギャップに対し、「会社を辞めたくなった」と回答した割合は31.9%となり、11のギャップ項目で比較すると最も高い割合となった。
「不安に感じた」と回答した割合は、「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識)の習得」が23.2%、「社会人の基礎的なマナーの習得」では19.7%となった。「落ち込んだ」と回答した割合は、「生活リズムや社会人としての考え方の習得」が18.8%、「社会人の基礎的なマナーの習得」が13.1%となった。どちらの感情も、11のギャップ項目の中で比較すると高い割合であることは見逃せない。
仕事に関するものは、離職意向ありは「不満」、離職意向なしは「不安」の感情につながりやすい
次に、「勤務時間」「仕事の難易度」「仕事の量」における、離職意向ありの新人のギャップの捉え方を見ていく。(図6)
「勤務時間」にギャップを感じた離職意向のある新人が抱く感情は、「不満を抱いた(20.4%)」が最も高く、「成長の機会と感じた」「会社を辞めたくなった」がどちらも18.5%と続く結果となった。離職意向のある新人は、想定していた働き方とは違うことに対し、不満・辞めたいと感じている人が多くいることが分かる。また、11のギャップ項目で比較した際に、「成長の機会と感じた」を選択した新人の割合が最も高かったのは、「勤務時間」についてだった。このうち、約7割が「想定よりも短かった・やや短かった」と回答した一方、「想定よりも長かった・やや長かった」と回答した割合も3割いた。
「仕事の難易度」にギャップを感じた離職意向のある新人は「大変だと感じた(23.1%)」「会社を辞めたくなった(21.2%)」「不安に感じた(17.3%)」「不満を抱いた(17.3%)」とマイナス感情が上位を占める結果となった。しかし、離職意向のない新人と比較すると、離職意向のない人も「不安に感じた(28.1%)」と回答した人が多く、その割合は離職意向のある新人よりも10.8ポイント高い結果となった(参考資料1)。「仕事の難易度」は、離職の有無にかかわらずネガティブに捉えられやすい項目であることが読み取れる。
「仕事の量」に関しては、1位が同率で「不満を抱いた」「大変だと感じた」が25.5%だった。不満を抱いた人の内訳を見てみると、約4割が「想定より少ない・やや少ない」と回答したことより、もっと仕事を与えてほしいといった不満を抱えている層が一定数いることが分かった。
「会社を辞めたくなった」ギャップ、生活リズムに続き「上司との関係性」の3項目が上位に
続いて、上司との関係性において、離職意向のある人がギャップをどのように捉えているか調査した。(図7)
「上司とのコミュニケーション」においては、離職意向のある新人は「会社を辞めたくなった(23.6%)」「不安に感じた(23.6%)」とマイナスの感情が上位となった。次に「安心した(16.4%)」が続き、上司がフランクで話しやすいことにプラスの感情を抱いている人が一部いることも分かった。しかしその割合は、離職意向のない新人と比較すると、12.8ポイントも少ない結果となった(後述、図9参照)。
「上司からの仕事のアドバイス」は、「会社を辞めたくなった」が25.5%となり、次に「不満を抱いた(18.2%)」「貢献したいと思った(16.4%)」となった。
「上司への悩み相談」では、「会社を辞めたくなった」が28.6%となり、次に「不安に感じた」が20.4%、「成長の機会と感じた」が16.3%と続いた。「会社を辞めたくなった」と回答した割合は、11のギャップ項目で比較すると、生活リズムや社会人としての考え方に次いで2位と高く、上司へ悩み相談ができるか否かが、会社を辞めたいと感じるかに強く影響しているといえる。また一方で、「成長の機会と感じた」と回答した人も11のギャップ項目の中で2位と高い結果となり、上司に相談ができている人は成長の機会とプラスに捉えていることが分かった。
「上司からのスキルアップサポート」では、「不満を抱いた」と「我慢した」が同率の24.5%に。特に、「我慢した」と回答した割合は、11のギャップ項目の中で最も高い結果になったことから、上司からスキルアップに関するサポートがない状況に対して我慢している新人が多くいることが分かった。
上司との関係性においては、成長の機会や貢献など、プラスの感情を抱いている層も一部いるが、会社を辞めたくなった、不安、不満、我慢といったマイナスの感情が目立った。特に「会社を辞めたくなった」と回答した人を各ギャップで多い順に見ていくと、「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識)の習得(31.9%)」に次いで2位「上司への悩み相談(28.6%)」、3位「上司からの仕事のアドバイス(25.5%)」、4位「上司とのコミュニケーション(23.6%)」と、上司との関わりに関する項目が2位から4位の上位を占めた。
離職意向ありは、職場の雰囲気・文化のギャップに対し、「不満・大変」とマイナスの感情を抱く
職場の雰囲気や文化のギャップについて、離職意向のある新人の捉え方を調査した。(図8)「配属先」においては、離職意向のある新人の23.3%が「会社を辞めたくなった」と回答。次に「貢献したいと感じた(20.0%)」「成長の機会だと感じた・落ち込んだ(15.0%)」となった。
「職場の雰囲気・文化」については、「不満を抱いた」が23.9%、「大変だと感じた」が18.3%、「会社を辞めたくなった」が15.5%と続いた。離職意向のある新人は、職場の雰囲気や文化について、ポジティブなギャップを感じる人が一定数いながらも、「不満」「会社を辞めたい」「大変」など、マイナスな感情を抱く人が多いことが分かった。
様々な感情の中で、上司との相談における「安心した」が離職意向ありなしで最大の差
最後に、離職意向がある新人と、ない新人が回答した10の感情の割合の差を比較し、最も大きな差に焦点を当てた。最も差があった項目は「安心」で、11のギャップ項目の中の「上司への悩み相談」において最大の差が出た。離職意向のある人はわずか8.2%となったが、離職意向のない人は30.3%も回答し、離職の有無で22.1ポイントも差があった。(図9)
では、上司への悩み相談に対して、新人はどのような悩みを相談したいと思っているだろうか。新人が入社前後に、先輩や同期からのアドバイス・相談で助かったことがどんなことだったかを質問してみたところ、先輩の場合「仕事につまずいた時(27.4%)」「会社や仕事に不満を感じた時(25.0%)」「職場の人との人間関係に悩んだ時(22.6%)」という順位となった。一方、同期の場合、「職場の人との人間関係に悩んだ時(28.6%)」「自分の成長に不安を感じた時(20.2%)」「キャリアについて不安を感じた時(19.0%)」となった。
【関連記事】
・健康管理システム「Carely」で「面談要因分析機能」を提供、休職・離職予防が可能に―iCARE
・若手社員の退職理由に迫った調査データ『早期離職白書2022』を発行、若手社員へのインタビューサイト「早期離職.com」もオープン―カイラボ
・4社に1社がジョブ型採用を導入、適性人材の獲得や離職率低下で手応え―学情調べ