以前の経験からオンボーディングプログラムの改善を開始
岡本勇一氏(以下、岡本) 新しく入社したメンバーがいち早く組織に根付き、活躍するための手法として、オンボーディングの重要性が高まっています。御社でも中途社員のオンボーディングに力を入れていらっしゃいますが、取り組みを本格化させた背景は何だったのでしょうか。
前田大輔氏(以下、前田) 当社では近年、組織が急速に拡大しており、海外籍のメンバーも増えています。そういった多様なメンバーを受け入れるために、当社では従来のハイコンテクスト文化からローコンテクスト文化への移行を目的とした組織改革プロジェクト「Be Trusted」を進めています(次図、参考記事)。それに伴い、評価軸の再設計やダイバーシティの推進など組織設計を全面的に見直す中、オンボーディングプログラムの改善は、「Be Trusted」プロジェクトの1つとして2022年2月からスタートしました。
私は2021年7月に当社に入社しましたが、当時はまだ社内でオンボーディングの体制が整っていなかったんです。しかし私自身、以前に経営者としてオンボーディングの効果を目の当たりにしていたので、当社のオンボーディングプログラムの改善については自ら進んで起案しました。
岡本 実際にオンボーディングの取り組みを始められたのは半年ほど前からなのですね。
前田 そうですね。当社の会計期間は8月から翌年の7月末なので、下期である2月〜7月にかけ、オンボーディングのトライアルとして、まずは印刷事業部の一部である約100名のメンバーを対象に始めました。今後は全社展開に向けて、小柳が専任となり、人事部の採用オンボードチームが中心となって進めていく予定です。
岡本 オンボーディングの取り組みを始める前に、どのような課題がありましたか。
前田 大きく2つありました。1つ目は、これまでオンボードが「聞き手責任」で行われていたことです。これは当社に限らず、日本企業全般に当てはまると思うんですが。多くの企業では話し手の説明が理解できない場合でも、分からないことは聞き手の責任であり、自分で調べて追いついてきてほしいというコミュニケーションがしばしば見受けられます。もちろん、聞き手である新メンバーの自己学習も必要ですが、受け入れ側が「新メンバーはラクスルの初心者である」と認識した上で、話し手責任でオンボードを行っていくことを徹底し、安心してパフォーマンスを発揮できる環境づくりに努めました。
2つ目は、オンボーディングの期間と内容の明確化です。これまではオンボーディングの定義が曖昧で、いつまでに何をするのかが不明瞭でした。そのため、入社して3ヵ月後をオンボーディングのゴールとして“あるべき姿”を言語化しました。
また、入社前にプレオンボードを新たに実施して、新メンバーには不安が少なく期待を高めた状態で入社していただき、パフォーマンスを発揮できるようにしました。