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HRzine Day 2023 Winter セッションレポート | #1(AD)

人的資本経営に取り組む企業は知っておきたい エンゲージメント可視化からの実践サイクル

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 2023年3月以降、有価証券報告書を発行する大手企業4000社に対して人的資本の開示を義務化することが決定し、人的資本経営への注目がいっそう高まっている。まさに潮目ともいえる今、検討から実践へと移行するうえで押さえておくべきポイントは何か。「HRzine Day 2023 Winter」に登壇した株式会社リンクアンドモチベーション 組織開発本部 企画室 マネジャー 山中麻衣氏が、従業員エンゲージメントを軸に解説する。

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山中 麻衣

山中 麻衣(やまなか まい)氏
株式会社リンクアンドモチベーション 組織開発本部 企画室 マネジャー

2009年入社。大手企業向け組織人事コンサルティングを経験した後、ブランド・マーケティングコンサルティング担当として企業の商品サービスのリブランディングに従事。 また、グループ全体の経営企画に携わり、M&Aや経営統合後の子会社の経営管理の体制構築を経験。その後、国内最大級のデータベースを持つ組織改善クラウドサービス 「モチベーションクラウド」のマーケティング責任者として、立ち上げ当初からの拡大を牽引。現在は、上記の経験を活かし、新サービスの事業企画、経営企画を担当。

人的資本経営の実践を阻む課題とは

 「人的資本経営とは、人材を『コスト≒原価管理の対象』ではなく『資本≒投資の対象』と捉え、人材への投資によって事業価値を高める考え方である」と説く山中氏。注目が高まっている背景には政府からの要請ももちろんあるが、商品市場の「ソフト化」・労働市場の「流動化」・資本市場の「無形化」という3つの市場の変化によるところが大きいという。

 モノづくり企業の筆頭だといわれたトヨタ自動車でさえ“モビリティサービスカンパニー”を名乗るようになり、モノではなく無形のサービスを提供するサービス業へと商品市場の「ソフト化」が進んでいる。そうなると、目には見えないサービスの価値を高めるために、ヒトのアイデアやホスピタリティ、モチベーションといった要素が欠かせなくなる。つまり優秀なヒトを確保することが企業の生命線になっているのだ。

 日本は米国に比べ、労働市場の流動化は低い国ではあるが、生涯における就社平均数が3社にまで増えており、過去に比べれば明らかに流動化は進行している。採用したヒトがずっと会社に居続けるのが当たり前ではなくなった今、企業には優秀なヒトをリテンションし続ける努力が求められるようになった。

 こうした流れの中で、企業を評価するために、人的資本という無形なものの価値をしっかりと捉えたいという投資家ニーズが高まっていることから、企業の生き残り戦略として人的資本経営に向き合っていかなければならなくなっているのである。

 人的資本経営はコロナ禍に入った2020年頃から叫ばれるようになった。人的資本開示に乗り出す米国の動きを受け、2021年には日本でも経済産業省からは人材版伊藤レポート2.0が、内閣府からは人的資本可視化指針が公表された。そして2023年3月以降に人的資本開示の義務化が決まった2022年以降、実践フェーズに入っていると山中氏は指摘する。

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 リンクアンドモチベーションが2022年下半期に行ったアンケート調査によると、非財務5資本のうち企業の持続的成長に必要だと思う項目として「人的資本」を挙げた人が、投資家だけでなく経営者・管理職の中でも最も多く、その重要性が浸透していることが分かった一方、「人材活用の最適化」や「従業員エンゲージメント」が人的資本経営の実践における課題になっていることが明らかとなったという。

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人的資本開示の先進企業が「従業員エンゲージメント」を重視するワケ

 人的資本開示に向けて、まず企業がすべきことは「アウトプット指標(KGI)」を設定することである。参考までに国内外の人的資本の重要指標を並べてみると、「従業員エンゲージメント」を挙げている企業が非常に多い。山中氏も「人的資本開示にいち早く取り組んでいる企業ほど、従業員エンゲージメントを大切にしている傾向が顕著に見られます」と指摘する。

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 従業員エンゲージメントの解釈はいろいろあるが、「企業と従業員の相思相愛度合い(会社への愛着や、仕事への情熱の度合い)」と理解すると分かりやすい。エンゲージメント(結びつき)が強ければ強いほど、パートナーシップと同様に、企業と従業員の関係性は良好なものになる。逆に、エンゲージメントが希薄になれば、関係解消(=退職)に至ることは言うまでもない。

 「なぜここで働きたいのか」という帰属意識にも影響を与える従業員エンゲージメントは、どうすれば高められるのだろうか。リンクアンドモチベーションでは、次の4Pとして定義しているという。

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 とはいえ、4Pすべての要素をパーフェクトに満たせる企業はないと山中氏。「自社がどこに注力して、どこで勝っていきたいのか。これを戦略的に決めることをしない限り、うまくいきません」と説く。

 そして、さまざまな研究結果から、従業員エンゲージメントの向上がもたらす効果には次表の5つがあるとして、「従業員エンゲージメントの向上と事業成果の向上には相関性が認められており、人的資本経営の中の重要指標として取り組むことは、非常にリーズナブルです」と強調した。

<従業員エンゲージメント向上がもたらす事業成果>
①労働生産性の向上 「エンゲージメントスコア」と「労働生産性」には正の相関が見られ、スコアの上昇に伴って、労働生産性(指数)は上昇することが分かっている。
②営業利益率の向上 「エンゲージメントスコア」と「当期の営業利益率」には正の相関が見られ、スコアの上昇に伴って、営業利益率は上昇することが分かっている。
③退職率の低下 「エンゲージメントスコア」が高い組織ほど、「退職率」は下がる傾向が見られ、また特にミドル層の退職率低下にも寄与することが分かっている。
④顧客満足度の向上など エンゲージメントが高いと、遅刻や早退の減少、事故の減少、商品欠陥の減少、顧客満足度の向上などの効果があることが分かっている。
⑤株価の向上 BIPROGY(旧 日本ユニシス)では、エンゲージメントスコアの向上に従い、営業利益、営業利益率、ROE(自己資本利益率)が向上。統合報告書でも人的資本に関する投資を開示している。
  • ①②③はリンクアンドモチベーションと慶應義塾大学岩本研究室(当時)との共同研究結果より
  • ④はギャラップ社『State of the Global Workplace Report』研究結果より
  • ⑤はダイヤモンド社ハーバードビジネスレビュー誌『経営の未来』より

人材資本経営の実践サイクルを回していこう

 では、従業員エンゲージメントをKGIに置いたうえで人的資本経営を進めていくには、具体的にどうすればよいのか。山中氏は「人材版伊藤レポート2.0」をもとに作成した次図を用いながら、3つの視点について、それぞれ解説を加えた。

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視点① 経営戦略と人材戦略の連動
人材戦略のものさしは、自社で作成したオリジナルのものになりがちで、他者から見たときに良いのか悪いのか、端的に分からないものになりやすい。それでは投資家に響かない。また、経営戦略と人材戦略が連動していなければ、PDCAも回しづらくなる。経営戦略と人材戦略が連動した明確なものさしを用意する必要がある。
視点② As is-To beギャップの定量把握
現状と目指す姿のギャップを定量的に把握するには、結果だけでなく課題や打ち手まで定量的に計測できるKPIが必要だ。たとえば、育休取得率や女性管理職比率などはゴールとしては分かりやすいが、そこにたどり着くまでの施策も定量的に計測するための工夫をしなければならない。
視点③ 企業文化への定着(人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化の醸成)
企業文化へ定着させるには共感を得ることが重要だ。さまざまな特性を持った従業員の共感を生み出せるような戦略方針や運営の仕方を、各企業の特性に応じて決めていく必要がある。

 人的資本経営の実現に向けては、上記3つの視点に気をつけながら、「診断」→「変革」→「公表」のサイクルをぐるぐる回していく。

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 まず「診断」においては、目指すべき姿(To be)と現在の姿(As is)とのギャップを定量化するのだが、ここでのポイントは「“自社らしい”目指す姿を言語化して、目指す姿と現状の差分を正しく把握すること」である。自社らしさを大切にすることで、従業員にもその状態を目指す意義が明確に伝わり、それが働きがいにつながる。そして自律的・自発的な行動が生まれ、事業成果の向上へとつながっていく。

 「目指すべき姿を決めずにエンゲージメント調査をして、低かったところを変えましょうというやり方では、決してうまくいきません。コストにも時間にも制約がある中で、投資の優先順位づけができなくなってしまうからです。単にエンゲージメントを計測すればよいわけではありません」(山中氏)

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 目指すべき姿が決まったら、サーベイを行う。リンクアンドモチベーションが提供する「モチベーションクラウド」なら国内最大級1万0060社312万人以上のデータが蓄積されており、相対比較できるようになっていることから、経営戦略と人材戦略が連動したものさしになり得る。

 次に「変革」を見ていこう。ここではAs is-To beのギャップを埋めるために改善策を立案し、実行する。ここでのポイントは、「実行する社員の状況や感情を捉え、施策に落とし込むこと」だ。エンゲージメントの状態によって、社員の共感度合いは大きく異なるため、それに合わせた打ち手を考える必要がある。

 「モチベーションクラウド」では、エンゲージメントスコアを部署別、属性別、年齢別、雇用形態別、グレード別など、さまざまな切り口で見ることができる。たとえば、エンゲージメントスコアがとても高い部署と、とても低い部署があったときに、どちらかに合わせて一律に同じ施策を埋め込もうとするのは悪手である。

 「エンゲージメントが良い状態の部署であれば、どんな施策を打ったとしても、上司の言葉をメンバーが素直に受け止め、本音で話し合うことができます。しかし、逆に悪い状態の部署に対して、強制的に『1on1をやれ』などと言ってしまうと、さらに関係が悪化してしまいます。エンゲージメント状態によって打ち手は変えなければならないということは、必ず頭に入れておいてください」(山中氏)

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 そして、実践サイクルの最後は、取り組みの進捗や方針を社内外に公表し、企業価値の向上につなげる「公表」だ。開示が求められる指標は今後さらに増えていくと考えたほうがよい。ここでのポイントは、「現状の数字(=過去の結果)よりも、未来の戦略(=実現するストーリー)を伝えること」である。公表する人的資本情報について、なぜ経営として注力するのかを明確にすることと、目指す姿に向けて今どの位置にいるのかを数値で示すことが重要だ。

 「投資家の方は美しいデータを求めているのではなく、経営者がどこに注目して、何を意識して、今後どうしていこうと考えているのかを聞きたいそうです。考え方を知った上で、対話の糸口にしていきたいと。この期待に応えていくことが公表のポイントです」(山中氏)

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 なお、人的資本経営の3つの視点と実践サイクルの3段階の関係は、以下の図のとおりだ。

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 リンクアンドモチベーションの「Human Capital Report」では、エンゲージメントに注力する背景や、それを通して実現したい未来についても併せて公表している。「One for All, All for Oneの実現」を組織の目指す姿として掲げ、従業員エンゲージメントの向上を組織戦略の最重要テーマに据えている同社の取り組みは、人的資本経営のお手本として大いに役立つだろう。興味のある方は、ぜひ参考にされてみてはいかがだろうか。

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