今回の要旨
コロナ禍を経て、人々の人生における仕事の位置付けが複雑化・多様化した。アメリカを中心に欧米では大量退職が問題となっているが、日本では若い世代を中心に自分の働いている会社に見切りをつけて退職する動きが、水面下で加速し始めている。若い世代は衝突より協調を選び上手にこなすことが得意なため、上司の立場からは、本当の気持ちや不満などを図ることは不可能に近い。「満足そうに働いていたのに突然退職した」を防ぐことに、EXの把握がどう役立つのか、またその導入・定着化に向けて企業はどのようなことに注意すべきなのかについて整理する。
今、日本の若者たちに起こっていること
欧米で起きているような大量の「自らの意思による退職」といった事態は起こっていないものの、若手の早期退職については近年注目されている。2022年10月28日に厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)」によると、新規大学卒就職者の3年以内の離職率は31.5%に達し、従業員1000人以上の大手企業に入職した若手の離職率も25.3%と、高い水準になっている。なぜ大手企業の若者の早期離職傾向が強くなっているのか。弊社は、その要因は大手企業勤務の若手の志向が変化しているからだと考えている。
調査対象に大手勤務者が多いリクルートキャリア「就職白書2021(冊子版)」によると、就職先を決める際に最も決め手となった項目で多かったのは、「自らの成長が期待できる」(49.8%)だった。若手の早期退職と照らし合わせて見ると、今、大手企業は適切な成長機会を提供できなくなっているのではないだろうか。1on1の積極的な実施など、従業員に寄り添う動きが活発になっているが、成長に必要な負荷・成長実感を得るための負荷を減らしすぎている可能性がある。
その大きな理由は、一連の労働法令の改正である。若年雇用促進法、働き方改革関連法、パワハラ防止対策法の施行により、量的負荷の面で若手の労働環境は明らかに不可逆的に変化した。加えて、コロナ禍によるリモートワークの法整備と急速な拡大は、さらなる時間的余裕を生み出している。問題は、これらの「量的負荷」の低減が、若手の成長に必要な「職場」作りの支障につながってしまっている点だと、弊社は見ている。