今回の要旨
これまで多くの日本企業は、日本固有の人事慣習に適応した国内の人事給与システムを活用し、海外に関しては業務で必要な最低限のデータをその都度収集する形であった。しかし、グローバルな先進企業では、ローカルの人事オペレーションの効率化よりも、グローバルやグループ全体でのタレントマネジメントに重きを置いたシステムを採用するようになっている。このようなシステムを日本でも導入して活用するためには、通常業務の中でタイムリーにデータを取得する仕組みづくりを導入プロジェクトの時点から考え、システムの機能構成の変更に合わせたローカルの業務変革が欠かせない。
グローバルで人事システムを統一する意味
日本でも、人事の役割がより「ビジネスを支援する」ことにシフトしてきた中で、グローバルやグループ全体の人事システムとして、グローバルでタレントマネジメントに実績のあるパッケージを導入することが多くなってきている。
この決断は、先進的な海外の企業との競争の中で、タレントマネジメントが当たり前となっているUS(アメリカ)やEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)地域の経営陣やマネージャー陣から強く支持される。一方で、日本やAPAC(アジア・環太平洋)の人事メンバーからは「グローバルやグループ全体向けの余分な作業が増える」「給与オペレーションが不便である」といった不満が出てきがちである。
これを「視座の違い」で片付けると人事メンバーの共感を得られず、欲しいデータが正しく集まらなくなる。加えて、本来の目的であるグローバルやグループ全体のビジネス支援のためにタレントマネジメントを運用する際、日本やAPACの人事メンバーの前向きな協力が得られない。
そこで、この課題に対するアプローチとして、我々が支援したいくつかのプロジェクトを典型的な2つの事例としてまとめたので紹介する。