「人的資本理論の実証化研究会」は、2023年度の参画企業が27社になったと発表した。
同研究会は、日本企業が「人的資本の情報開示」にとどまらず、「そもそも人的資本が企業価値にどれだけ寄与するものか(人的資本の投資対効果)」を明らかにすることで、経営者へデータに基づいた人材施策の投資判断を促し、かつ投資家への戦略的な情報開示を実現するために昨年発足した。
2022年度の研究成果として、企業価値に影響を与える人的資本の指標として、管理職のイノベーション力やSDGs力が企業価値(株式時価総額)推移の説明や予測につながる可能性が示唆された。2023年度は、参画企業の人材能力関連データを測定・活用することでデータ数を増やし、指標の確からしさやその他の有力な指標の有無を検証するという。
主な参画企業のコメントは次のとおり。
資生堂
「当社のミッションである『BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD』におけるイノベーション創出の源泉は人財であり、人的資本経営は人財戦略の要になります。事業の持続的成長による経済的価値の向上と社会的価値の創出に向け、人的資本の定量化やKPI・指標設定の検討における同研究会での活動に貢献し、その知見を活かして参ります」
オリエントコーポレーション
「人的資本投資をめぐる社会的・経済的・戦略的な動向や、企業価値向上との定量的な関係性を理解することが、当社の『人財戦略』の推進上、きわめて重要な意味を持つと考え、参画いたしました。また、他の参画企業の進んだ取り組みについて直接お聞きできることも、貴重な機会であると考えております」
常陽銀行
「人的資本投資がどのように企業価値に影響を与えるのかについて、相関が高い人事関連指標やESG対応力などを明確化し、当行における人事施策の高度化とエンゲージメント向上を図りたいと考え参画しました。研究会テーマの理解や他の参画企業様との情報交換を通じ、当行における人事施策・人的資本経営の充実や企業価値向上につなげていきたいと考えております」
スカパーJSAT
「弊社は、2021年度よりマテリアリティの一つに『多様な人財の活躍』を定め、様々な取り組みを進めてまいりました。さらに今年度は人財戦略の整備、人事制度の大幅見直しを行い、人的資本強化を本格化させております。今回このタイミングで本研究会に参加する機会をいただき、研究会を通じて得られる知見を、ぜひとも今後の取り組み促進につなげていきたいと考えております」
東北電力
「企業価値向上に向けた、自社の人財戦略の検討に活かしたいと考え参加を決めました。『理論』と『実証』が特徴で企業経営に有益な研究であると考えています。実際のデータを活用した人的資本の指標検証や課題形成に期待するとともに、毎回同様の問題意識を持った企業との意見交換も多くの示唆を得られるものと期待しております」
TIS
「人的資本投資による企業価値へのインパクトについて、当社でも仮説を立てて検証を進めていますが、効果測定は容易ではありません。同じ課題を持つ企業が業界を超え、科学的根拠とデータをもとに検証・議論することは有意義であると考えています。当研究会の成果が、社会経済と人材の活性化に寄与するものと期待しています」
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