ココナラがデータドリブンHRに取り組み始めた理由
——まずは、御社がデータドリブンHRに取り組まれることになった経緯を教えていただけますか。
最も大きな契機は、経営戦略です。我々は創業して10年が経ちます。IPOも経て、次のチャレンジをしていくフェーズなんですね。ココナラの世界観[1]を広げていくために、新規事業をどんどん作って、事業の多角化を図っていこうと考えています。
そうなると、これまで単一事業・ワンチームでやってきた組織から、多角化戦略に応じた組織へと変えていかなければなりません。そのために事業ステージに応じたマネジメントを可能にするという意味で、“組織戦略オプションの獲得”を人事の戦略コンセプトに掲げ、採用とエンゲージメントの2つでKPIを設定することにしました。
採用で目指すKPIは「ポジション充足率の向上」です。10年前からあるココナラと、2016年にできたココナラ法律相談、そして今年から始めたココナラエージェントでは、事業ステージが異なります。つまり、人材要件が異なるわけですね。人材要件と入社後のパフォーマンスをデータで掛け算することで、採用した人の活躍度合いを見たり、適所適材にマネジメントしたり、といったことができるようになります。
また、エンゲージメントに関しては、これまでココナラ一本足打法でやってきたところから、多角化に舵を切ると、組織が揺らぐのは必然で、ふつうに考えたらエンゲージメントが下がるはずなんです。それでも不本意な離職や組織のコンディションが悪化することは、できるだけ避けていきたい。そのために「エンゲージメントスコアを一定以上維持する」というミッションを組織長に課して、エンゲージメントをモニタリングするようにしています。
これらの結果として、1人当たり営業収益の維持・向上を目指す、という立て付けになっています。
注
[1]: ココナラは、ビジョンとして「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」、ミッションとして「個人の知識・スキル・経験を可視化し、必要とする全ての人に結びつけ、個人をエンパワーメントするプラットフォームを提供する」を掲げている。
——データドリブンHRにシフトされたのは、いつ頃からですか。
多角化戦略でココナラエージェントを始めることが決まった1年半ほど前からですね。200人規模の企業で、多角化戦略に舵を切ろうというステージの会社がデータをそろえたところで意味があるのか、という話もありました。でも、だからこそ今からそろえていかないと、データを統合すること自体が困難になる。そんな想いで先行投資しています。
データドリブンHRの全体構想でいうと3ステージで進めていくことを想定しています。今は第1ステージ。経営とHRがデータ活用するステージですね。次の第2ステージではマネジメントにもデータを開放していく。最後の第3ステージではメンバー全員にデータを開放していきたいと考えています。
今の第1ステージでは経営戦略にひもづく採用とエンゲージメントについて、HR主導で検証したり示唆出しをしたりしているところです。まずは、我々センターである程度データの解釈の仕方や活用方針を定めてから次に行きたいというところですね。