日本がDXに取り組まないといけない背景とは
そもそも、企業がDXを推進する背景とはなんなのだろうか。経済産業省で「デジタル人材育成プラットフォーム」の制度設計を行う金杉祥平氏は、日本が直面している社会課題を次のように解説した。
「生産年齢の人口は1995年をピークに減少傾向です。近年、女性や高齢者の労働参加率の向上により雇用者数は増えてはいるものの、労働投入量がこれ以上増加することは期待できません。また、2023年から2050年にかけて労働力は下がる見込みで、企業が人材不足に直面するのは不可避という状況です。加えて、日本は海外に比べて企業の人的投資率が低く、個人の社外学習・自己啓発を行っていない人の割合も諸外国と比べて高いことが分かっています」(金杉氏)
こうした状況に警鐘を鳴らす金杉氏は、日本が構造的な課題を乗り越えて成長する鍵はデジタル投資の活性化だと述べる。
しかし、そのデジタル投資の状況も、「世界デジタル競争ランキング 2022」では日本は63ヵ国中29位と低迷している。とくに全体を引き下げる要因となっているのが「人材」(50位)、「デジタル技術スキル」(62位)の2つの項目であるという。
これを受けて金杉氏は、企業の人材不足に対しては「人材確保の政策」と「省人化」が必要であり、その対応策の1つがDXであるとまとめた。
「DXとは、『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』と『デジタルガバナンス・コード2.0』で定義されています。あくまで従来の業務のIT化でなく、経営のやり方や製品・サービスのあり方をデジタル前提で抜本的に見直すのがDXです」(金杉氏)
そして、DXを進めるうえでは社内の人材育成も欠かせないと金杉氏は強調した。