Zoom AI Companionはアシスタントからコーチへ進化する?!
トンプソン 他のAIモデルには、多くのリスクがありますよね。バイオウイルスを設計する、フィッシング攻撃するなど、あらゆる種類の間違った方向に進む可能性のある、恐ろしいリスクです。しかし、それでも会議の効率化などを考えると、使わない手はないでしょう。もちろん、プライバシーに関する懸念があるのは分かります。あなたは、この問題をどのように捉えていますか。
ファン プライバシーについては、たいへん懸念しています。ZoomがAIのトレーニングのために皆さんの会議の内容を使用することは、絶対にありません。議事録や要約には、会議に参加された人しかアクセスできません。これが私たちのこだわりであり、プライバシーやAIの安全性は、私たちにとって最優先事項です。
トンプソン 文字起こしされた会議の内容はサーバーから削除されるのでしょうか。
ファン デバッグのために短期間だけ保持しますが、その後は完全に削除します。お客様がリクエストしない限り、私たちが会議の内容にアクセスすることはありません。Zoomの従業員は誰も許可なしにお客様のデータにアクセスすることはできないのです。
トンプソン それはよかった。ところで、会議が録画されると、気軽な雑談が少し減ったように感じることはありませんか。ビジネスが早く進んでよいこともあるでしょうが、社会的なつながりが減ってしまうという意味では、悪いことでもあるように思うのです。あなたはどう思いますか。
ファン 会議が録画されると、ほとんどの人はより良い行動をするようになります。つまり、私たちはより良い世界にしているのです。それは良いことではありませんか? いずれにせよ、現代のデジタル世界では、「話したことはすべて、誰かに聞かれる仕組みがある」と思っておくべきです。Zoomのことではありませんよ。先ほども申し上げたとおり、Zoomが会議の内容をAIのトレーニングに使用することはありませんから。
トンプソン 最後に、Zoom AI Companionは今後どのように進化していくのか、教えてください。いまは会話の内容を忠実に書き起こして分析することに注力していると思いますが、今後はコーチのように、会議中の私の表情やジェスチャーに対して、何かアドバイスをしてくれるようになるのでしょうか。
ファン そうですね。能力的には、すでにその域に到達しつつあるように思います。大規模言語モデルは、あらゆる研究論文を読み尽くすことができるので。あなたがそれを望むのであれば、Zoom AI Companionは将来的にあなたの本当の親友になれるはずですし、Zoom AI Companionが実際にコーチの役割も担えるようになれば、私たちにとってもっと重要な存在になるでしょう。
トンプソン 今日はお招きいただき、ありがとうございました。
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この基調講演では、Zoom AI Companionが人々にもたらす便益が明らかにされた。たとえば、議事録作成にかかる時間を大幅に削減する。また、会議中の発言をリアルタイムに字幕化して使われている言語(英語など)が得意ではない人を交えた議論も支援してくれる。そのうえ、導入もしやすい。Zoomの有料版を使用しているユーザーは無料で利用できるのだ。
一方で、AIの利用にリスクを感じる人もいる。AIのトレーニングに自社の議事録などが使われては、その内容が漏洩する恐れがあるためだ。この点、Zoom AI Companionはユーザーのデータをトレーニングに用いることはないという。経営層がトップシークレットな話をするといった場の会議やその議事録作成でも、安心して使えるわけだ。
どれほどテクノロジーが進化しても、ビジネスを支えるのは人と人とのコミュニケーションであり、情報共有である。これを支援するZoom AI Companionは、業界・業種を問わず、心強いパートナーとなり得るだろう。