総勢25名の研究者が人材マネジメントの先進企業をインタビュー
自社の課題と日々向き合っている人事のみなさんにおいて、すぐに参考にできる事例を探しながら、自社により適用する形を見つけるための理論も知りたいと感じている方は少なくないのではないでしょうか。そのような方におすすめなのが、3月22日に刊行されたばかりの書籍『人材マネジメントの革新 理論を読み解くための事例集』(千倉書房)です。
本書は、人事・組織領域の専門家である、江夏幾多郎氏(神戸大学経済経営研究所准教授)、石山恒貴氏(法政大学大学院政策創造研究科教授)、服部泰宏氏(神戸大学大学院経営学研究科教授)の3人が編著者となり、若手研究者を加えた総勢25人が調査・執筆。人材マネジメントにおける注目の12テーマについて、先進企業1社をピックアップし、各社の取り組みを掘り下げています。
目次
- 第1章【人事システム】人事機能の部門化とその発展(株式会社SmartHR)
- 第2章【社員等級制度】外部労働市場の流動性への対応と内部労働市場のニーズの両立への挑戦(株式会社メルカリ)
- 第3章【雇用区分制度】働き方に制約がある従業員の中核的活用(イオンリテール株式会社)
- 第4章【高齢者雇用】キャリア後期の従業員の働き方の模索と試行(村田機械株式会社 研究開発本部)
- 第5章【副業・兼業】副業から「福」業へ―社会・会社・個人をつなぐ副業制度―(ロート製薬株式会社)
- 第6章【労使関係】労働組合のアイデンティティ再形成による労使関係の進化(三井物産労働組合/Mitsui People Union)
- 第7章【エントリー・マネジメント】多様な労働市場からの人的資源流入のマネジメント(住友商事株式会社)
- 第8章【配置転換】人材配置の最適化を可能にする人事施策と組織風土(トラスコ中山株式会社)
- 第9章【人材育成】自己変容する学習共同体を通じた次世代リーダーの育成(ソフトバンクアカデミア)
- 第10章【パフォーマンス・マネジメント】業績と成長の循環を生む人事評価コミュニケーション(コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社)
- *第11章【グローバルHRM】国際的な人事管理の脱中心化に向けた取り組み(アステラス製薬株式会社)
- 第12章【データ活用】適材適所を可能にする組織体制とテクノロジー(株式会社サイバーエージェント)
本書の特徴は、各社の調査を行い、原稿を用意した執筆者がみな研究者である点でしょう。執筆にあたっては編著者から「特定の理論枠組みに縛られず、事例のありのままの姿を描く」とリクエストがあったようですが、そこは特定の理論領域を専門とする研究者。専門家の目をとおして、「企業が何を考え、どのように何を行ったか」という事実が記述されるおもしろさがあります(HRzineでもたくさんの事例記事がありますが、私のような会社員が取材・編集する事例との違いも感じられるのではないでしょうか)。
だからこそ読者の皆さんには、本書に収められた様々な事例に目を通すことを通じて、社会的現実(人事管理に関する物事・取り組み)を理論的に捉えることの面白さに加え、十分に説明されざる社会的現実が理論構築の必要性を呼びかけていることに、気づくことができるでしょう。(p.3)
そういった編著者の想いにより、各章の末尾には事例に関連する理論の解説もあります。紹介されている事例を、理論的に捉えるきっかけとなるでしょう。
さらにもう1つの特徴は、調査が2023~2024年に行われたこと。人材マネジメント領域に限らず、企業の取り組みはたえず進化しています。そのため、先進的かつフレッシュな事例が書籍にまとまっていることはとても貴重です。興味のある方は、早めに手に取ることをおすすめします。
各領域における先進事例を知り、理論を理解するためのきっかけとなる本書。学びの多い1冊です。私も繰り返し読もうと思います。