人材獲得の競争激化で注目される「アルムナイ採用」
労働人口不足が進む中で、人材獲得競争は激しさを増しています。そこで注目されているのが、「アルムナイ採用」です。アルムナイとは、人事分野では企業を退職した元従業員(退職者)を表す言葉。つまりアルムナイ採用とは、退職者を対象とした「再就職の斡旋」です。
アルムナイ採用が注目されている理由として、次のようなメリットがあります。
アルムナイ採用のメリット
- 採用コストとリスクの削減
- アルムナイ採用は直接応募が多く、エージェントへの紹介料が発生しないため、比較的低コストで採用できます。また、過去の実績(仕事の力量・経験など)の情報があることから、活躍できるポジションを想定でき、低いリスクで採用できます。
- 育成コストの削減
- アルムナイは、社内ルールや独自システムの取り扱いに慣れています。そのため、戦力化までの育成コストを少なくできます。
- 外部経験による、新しい視点の獲得
- 外部での経験から、「無駄なお作法」「硬直的な組織の原因」を見つけやすい立場であるため、風土変革のきっかけになる場合があります。
- 企業のイメージアップ
- 退職者との友好関係をアピールできるとともに、「また戻りたいほどの会社」だという魅力を発信できます。
一方で、アルムナル採用には、次のようなデメリットもあります。しっかりと体制を整えて、採用活動を始めることが大切です。
アルムナイ採用のデメリット
- アルムナイの不活性
- アルムナイは、1度会社を辞めたことへの後ろめたさを抱えている場合があります。そういう人を採用する場合は、精神的にマイナスな状態から職場に参加する訳ですから、ていねいに受け入れて、ふだんどおりに業務が進められるようになるまで支援することが大切です。受け入れがうまくいかない場合には、本人がパフォーマンスを発揮できず、再離職のリスクがあります。
- 既存社員のモチベーション低下
- アルムナイを好待遇で迎える場合には、「退職前に優秀な実績を残し、新たな環境でも実績を出した人材だからこそ、好待遇で再雇用された」と、周知する必要があります。理由が分からないと、既存従業員から「どうして出戻った人が評価されるのか」「自分が継続雇用されてきたことに価値はないのか」と不満が出ることが予想されます。会社との信頼関係が壊れることも心配されますし、アルムナイを受け入れる部門運営への悪影響というリスクも考えられます。
アルムナイが陥りがちな再入社後の悩みとは
アルムナイ採用で復帰した社員は、退職前と同じ状況を前提としてます。しかし、退職期間内に大幅な方針転換があったり、部門長が交代したりと、職場の状況が変わっているケースは少なくありません。その影響で、「スムーズに仕事が進められない」「既存の社員と摩擦が生じてしまう」場合があります。
既存社員のうち退職以前の活躍を知らない人からは、「なぜこのパフォーマンスで戻ってこれたのか」などと疑問を持たれ、良く思わない人が出てくる可能性もあります。
そういった状況に陥ると、アルムナイ採用された社員は職場で浮いてしまい、「なぜ、以前のようにパフォーマンスを発揮できないのか」「他社で経験したことを活かせない」など、悩みを抱えてしまいます。
特に管理職で採用されたアルムナイは、部下からのプレッシャーを感じつつ、上長からの期待に応えようとするがあまり、弱い自分を見せられずに、「こんなはずではない。自分は役に立たなければいけない」と、1人で苦しむ危険性が高くなります。このような日常が続いてしまうと、精神的に疲弊していき、その負担から体調を崩すリスクが高まるでしょう。