突然メンタル不調を明かして退職する社員
「退職させてください。精神科に行ったら、うつ病と診断されました」
これまで元気に見えていた会社員のAさんが、上司に向けて突如放った言葉。Aさんは真面目で、弱音も吐かず、笑顔で仕事をする人だった。がんばりすぎているAさんに上司も声をかけていたが「大丈夫です!」と元気に答えていた。
しかし、Aさんは誰にも悟られないよう耐えていただけだった。プライベートでのストレスや職場の悩みを誰にも言わず、ついにはメンタル不調になり、誰にも悟られず会社を去る“サイレント退職”をしたのだった。
この記事で扱う「サイレント退職」は、一見問題のないように見える社員がいつの間にかメンタル不調に陥り、休職・退職に至ってしまうことを指します。社員が発するSOSが小さく、会社が気づいて対応することが難しいのが特徴です。
あなたの会社にも、Aさんのように、誰にも悟られずにストレスを抱え続け、ついにはメンタル不調に陥り突然休職や退職をした社員がいるかもしれません。
メンタル不調になるほどの問題を抱えたAさんは、なぜサイレント退職に至ったのでしょうか。声をかけてくれた上司や身近な同僚に相談はできなかったのでしょうか。なぜ会社側はAさんを気にかけていたのにもかかわらず、メンタル不調に気づけなかったのでしょうか。
サイレント退職が起こりやすい職場の環境とは
サイレント退職が起こる理由の1つに、社員同士の交流が減ったことが大きく影響しています。
コロナ禍を経て、リモートワークを推奨する会社が急増しました。リモートワークでなくとも、Zoomで会議を行うようになった会社は多いでしょう。おかげで移動時間はカットでき、業務の無駄はなくなりました。しかし一方で、会議室に行くまでの無駄話や会議おわりに「今日の会議は長かったね」といった雑談で、社員同士が交流する時間は消えてしまいました。
また、あらゆるハラスメントに気をつけなければならない現代において、飲み会は非常に誘いづらいものになりました。今では、飲み会どころか、業務外の話をどこまで話してよいのか分からない社員が増え、社内のコミュニケーションは希薄になる傾向が強まっています。
こうした状況の中で、悩みのある本人にとっても、相談を受ける上司や同僚にとっても、「ちょっとした相談」はとても難しくなってしまいました。相談を仰々しいものだと認識してしまい、「相談があるのですが」と声をかけられると、すぐに「退職相談か⁉」と身構えてしまう上司や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。