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特別寄稿 | サイレント退職

「大丈夫です」と笑顔だった社員が突然退職 メンタル不調を隠したのち辞める「サイレント退職」の原因とは

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 近年、メンタル不調に陥った社員が周囲に悟られないように振る舞い、ある日突然退職してしまう「サイレント退職」が増えています。優秀な人が急に転職する「びっくり退職」とは異なり、元気そうに見えていた人がメンタル不調を誰にも相談できず、限界を迎えて休職・退職せざるを得なくなってしまうのです。また、同僚や上司が気にかけても「大丈夫です」と答えるなど、分かりやすいSOSが発されず、事前の対応が難しいのも特徴です。本稿では、公認心理師や産業カウンセラーの資格を持ち、10年以上精神科臨床の現場で活動してきたSmart相談室カウンセラーの上田広大氏が、サイレント退職が起こる原因とその対策を解説します。

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突然メンタル不調を明かして退職する社員

 「退職させてください。精神科に行ったら、うつ病と診断されました」

 これまで元気に見えていた会社員のAさんが、上司に向けて突如放った言葉。Aさんは真面目で、弱音も吐かず、笑顔で仕事をする人だった。がんばりすぎているAさんに上司も声をかけていたが「大丈夫です!」と元気に答えていた。

 しかし、Aさんは誰にも悟られないよう耐えていただけだった。プライベートでのストレスや職場の悩みを誰にも言わず、ついにはメンタル不調になり、誰にも悟られず会社を去る“サイレント退職”をしたのだった。

 この記事で扱う「サイレント退職」は、一見問題のないように見える社員がいつの間にかメンタル不調に陥り、休職・退職に至ってしまうことを指します。社員が発するSOSが小さく、会社が気づいて対応することが難しいのが特徴です。

 あなたの会社にも、Aさんのように、誰にも悟られずにストレスを抱え続け、ついにはメンタル不調に陥り突然休職や退職をした社員がいるかもしれません。

 メンタル不調になるほどの問題を抱えたAさんは、なぜサイレント退職に至ったのでしょうか。声をかけてくれた上司や身近な同僚に相談はできなかったのでしょうか。なぜ会社側はAさんを気にかけていたのにもかかわらず、メンタル不調に気づけなかったのでしょうか。

サイレント退職が起こりやすい職場の環境とは

 サイレント退職が起こる理由の1つに、社員同士の交流が減ったことが大きく影響しています。

 コロナ禍を経て、リモートワークを推奨する会社が急増しました。リモートワークでなくとも、Zoomで会議を行うようになった会社は多いでしょう。おかげで移動時間はカットでき、業務の無駄はなくなりました。しかし一方で、会議室に行くまでの無駄話会議おわりに「今日の会議は長かったね」といった雑談で、社員同士が交流する時間は消えてしまいました。

 また、あらゆるハラスメントに気をつけなければならない現代において、飲み会は非常に誘いづらいものになりました。今では、飲み会どころか、業務外の話をどこまで話してよいのか分からない社員が増え、社内のコミュニケーションは希薄になる傾向が強まっています。

 こうした状況の中で、悩みのある本人にとっても、相談を受ける上司や同僚にとっても、「ちょっとした相談」はとても難しくなってしまいました。相談を仰々しいものだと認識してしまい、「相談があるのですが」と声をかけられると、すぐに「退職相談か⁉」と身構えてしまう上司や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

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この記事の著者

上田 広大(ウエダ コウダイ)

北海道生まれ。北海道福祉・保育大学校卒業。精神保健福祉士の資格を取得し、精神科病院の医療相談室に5年以上勤務。2017年から精神科クリニックにて復職や再就労支援、認知行動療法の専門プログラムに携わる。トータル10年以上、精神科の領域でうつや不安の認知行動療法、就労や生活、人間関係、再発予防、介護、住まい、精神障害年金などの相談に従事。公認心理師や産業カウンセラーの資格を取得し、心理支援や認知行動療法をテーマとした実践発...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://hrzine.jp/article/detail/5700 2024/05/17 08:00

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