理想は分かるけど変われないよ……
日本企業向けの勉強会で筆者が世界標準の組織管理の話をすると、「経営として求めているのはこのような仕組みである。自社にもあったらよいと思う」と肯定的な感想をいただきます。しかし、たいていその後に、「だけど、うちでは難しいよ。なぜなら……」とできない理由の説明が続きます。
「うちはメンバーシップ型でやっているので、レポートラインやポジションの考え方は合わない。適正人数なんて話をしたら人を切ることだと思われてしまう」
「うちは事業軸と地域軸のマトリクス経営をしているし、出向や兼務がたくさんあるから組織構造が複雑で管理しきれない」
など、さまざまな話が出てくるのですが、これらは組織管理ができない理由にはなりません。メンバーシップ型やマトリクス経営は、組織管理の考え方と相反するものではないですし、これらの考え方そのものを変えるという選択肢もあります。
また、このような会社では、「各組織で業務はしっかり回っているが、組織長は余力を持ちたいので人が足りないと言い続ける」「指揮命令系統が不明確なことから、従業員が理不尽な扱いを受けることがあるけれども、その理不尽な状況でがんばり続けることが『仕事ができること』だと思っている」など、組織管理の課題を潜在的に抱えており、変革に取り組むべき状況であることが多いです。
次ページでは、JTC(Japanese Traditional Company:日本の伝統的な会社を指すネット用語)の組織管理における問題点について、典型的な例を挙げて説明します。