jinjerは、企業の経営層・部長クラス以上を対象に「人事データの整備と活用に関する実態」について調査を実施した。
人事データの整備状況、経営層と人事担当者の認識にズレ
「人事データ(従業員情報、給与、勤怠、評価など)がどの程度整備されていると感じているか」という質問をしたところ、「非常に整備されている」と回答した割合は、経営者が32.8%であったのに対し、人事担当者は8.3%と約4倍の開きが見られた。
一方で、「あまり整備されていない」または「ほとんど整備されていない」と回答した人事担当者は合わせて45.9%に上るのに対し、経営者は20%にとどまった。
この結果は、経営層が人事データの整備状況を楽観視する傾向にある一方で、現場の人事担当者はデータの不整合や手作業による非効率性を感じているという実態を示している。また、企業全体で、正しい人事データを整備できているとは言い難い状況になっているという。
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人事データ整備の利点でも、人事と経営層で異なる認識
人事データが整備されていることの利点について質問したところ、人事担当者が最も実感している利点は、「労務ミスの削減と業務効率化」で41.7%と突出していた。次いで「公平で納得感ある評価と処遇」が23.2%、「リアルタイムな人事分析と意思決定」が21.9%と続いた。
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一方、経営層が最も実感している利点は、「経営判断に必要な情報のリアルタイム把握」で27.6%。次いで「人材育成や配置の精度が向上」が25.5%、「勘や印象に頼らない根拠ある判断」が20.1%という結果になった。
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人事担当者が日々の実務における効率化や正確性の向上を重視しているのに対し、経営層は正しい人事データの活用による経営判断や戦略的な人材マネジメントへの貢献をより期待しているという、それぞれの立場からの認識の違いを示している。
人事データ未整備が引き起こす課題「経営層は戦略」「人事は運用」に懸念あり
人事データが整備されていないことで生じる課題について、経営層が最も懸念している課題は「後継者やリーダー候補の育成ができていない」で31.7%。次いで、「情報連携のスピードが遅く、意思決定が遅れる」が26.7%、「評価や給与の納得度が低く、従業員に不満が蓄積している」「各部門の課題が可視化されず、的確な打ち手が打てない」がいずれも25.0%と続いた。これは、経営層が人事データの未整備によって、経営戦略や組織の人材基盤に関わる上位の課題に直面していることを示唆している。
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一方、人事担当者が最も課題だと感じているのは、「情報が複数のシステムやファイルに分散している」で20.7%。これに「必要なデータがどこにあるのか分かりづらい」が15.9%、「データの入力・更新が現場任せで統一されていない」が15.2%と続く。これらの結果は、現場の人事担当者が日々の業務におけるデータ管理の煩雑さや非効率性に直接的に悩まされている現状を浮き彫りにしている。
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この差異は、人事データの未整備が、経営層には「戦略的な課題」として、人事担当者には「運用上の課題」として認識されているという認識のギャップを示しており、これが企業全体の人的資本経営推進を阻害する要因となっている可能性があるという。
人事が、人事データを必要とする場面は「業務効率化」と「戦略的活用」
人事担当者がどのような目的や場面で人事データが必要になると感じているか質問したところ、「労務リスクや組織課題を分析・対策するとき」が45.5%で最も多く、次いで「後継者育成や管理職登用に向けて、タレントマネジメントを実施するとき」が43.8%、「等級別・職種別の給与や評価の分布を可視化し、制度の見直しを行うとき」が41.1%と続き、戦略的な人材育成・配置や公平な人事制度運用を求めていることが分かる。
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経営層が、人事データを必要とする場面は「戦略的な人材」と「組織状況の把握」
経営層が「必要とすることが多い人事データ」として最も重視しているのは、「管理職・次世代リーダー候補の評価・スキル・育成状況」で55.5%と半数を超えた。次いで「労働時間や残業時間、有休取得率など勤怠に関する情報」が44.5%、「部門別・年代別・職種別の社員数や構成比」が40.1%と続いた。経営層が人事データを通じて、戦略的な人材ポートフォリオの構築や組織全体の健全性の把握を求めていることが分かる。
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人事データの整備・活用に向けた取り組み:経営層と現場で進捗認識にギャップ
人事データの整備・活用に向けた現在の取り組みについて質問すると、最も取り組みが進んでいると認識されている項目は、経営層では「データ入力・更新の自動化(RPA、連携ツールなど)を導入している」が43.5%と最も高く、次いで「人事システムの刷新・統合を行っている」が37.1%だった。
一方、人事担当者で最も割合が高かったのは「データ入力・更新の自動化(RPA、連携ツールなど)を導入している」の19.7%だが、これは経営層の回答数と比較すると約半分程度の認識にとどまっている。すべての項目において、経営層のほうが人事担当者よりも「取り組んでいる」と回答する割合が高い傾向が見られた。
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今後人事データ活用で実現したいこと「現場は効率化」「経営層は公平性と経営貢献」を重視
今後、人事データを活用することで実現したいことについて聞くと、人事担当者は「労務ミスの削減と業務効率化」が35.2%で最多となり、次いで「リアルタイムな人事分析と意思決定」が22.4%、「人的資本開示への対応精度向上」が21.7%と続いた。
一方、経営層が最も実現したいと考えるのは、「公平で納得感ある評価と処遇」で53.8%と半数以上が回答した。これは、従業員エンゲージメントや組織の健全性に対する経営層の意識の高さを示唆している。次いで、「労務ミスの削減と業務効率化」が48.2%、「リアルタイムな人事分析と意思決定」が43.8%と続いた。
人事担当者が「実務の効率化と改善」を重視する一方で、経営層は「従業員への公平性や経営全体の最適化」、そして業務効率化といった多角的な視点から人事データ活用に期待していることが明らかになった。
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なお、調査の概要は次のとおり。
- 調査概要:人事データの整備と活用に関する実態調査
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2025年6月3~10日
- 調査対象:企業の経営層・部長クラス以上、企業の人事・総務担当者 589名
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