4. 訴訟になる前に取っておくべきだった対応(予防策)
(1)労働基準法の遵守を徹底すべき
今回は、「就業規則」と題する手書きの書面が存在していたものの、組合に対しては所在不明と回答しており、周知も十分ではありませんでした。
さらに、労働時間管理や割増賃金の計算についても不適切な運用がなされていました。
労働基準法への対応が杜撰であったと評価せざるを得ません。
こうした不備により、割増賃金の不払いなどの問題が生じ、最終的には訴訟に発展しました。
労働基準法の遵守を徹底し、判断が難しい事項については専門家の確認を受けるなど、適切な対応を行っていれば、訴訟の提起には至らなかったと思われます。
(2)労働時間の管理は労働安全衛生法上でも重要
今回は、労働基準法について解説しましたが、労働時間の管理は労働安全衛生法上でも重要です。いわゆる健康確保の観点です。
具体的には、以下のとおり定められています。
<労働安全衛生法>
- 第66条の8の3事業者は第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。
<労働安全衛生規則>
- 第52条の7の3法第66条の8の3の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
- 2事業者は前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。
したがって、会社としては、労働基準法及び労働安全衛生法の趣旨を理解し、客観的かつ適切な方法により労働時間の把握・記録を行うことが求められています。
そして、労働時間の把握・記録を徹底的に行うことが、結果的に、今回のような割増賃金に関するトラブル発生の予防につながります。