パーソル総合研究所は、「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」の結果を発表した。
同調査における「労働者性」とは、「労働者として法律上の保護を受けられる立場にあるかどうか」を判断する基準としている。
正社員の副業実施率、企業の副業容認率・受け入れ率がそろって過去最高に
4回目となる同調査では、正社員の副業実施率、企業の副業容認率・受け入れ率がそろって過去最高を記録した。副業実施率は、調査開始以降初めて上昇に転じている。
副業容認率が過去最高、全面容認の割合は2018年の約2倍
厚生労働省が示す「モデル就業規則」が改定され、新たに副業・兼業に関する規定が新設された2018年以降、企業の副業容認率は上昇の一途をたどる。副業容認率の内訳を見ると、「全面容認率(ルールや制限なく副業を認める)」の割合が上昇傾向であることが分かった。
本業先企業(副業容認企業)の副業社員へのサポート率が9.0ポイント上昇
本業先の企業(副業容認企業)が、副業社員に対して行うサポートの実態を見ると、サポート率は、2023年調査より9.0ポイント上昇しており、副業推進が、一般的な取り組みとして企業間に広がりつつあることが示唆される。
正社員の副業実施率が過去最高の11.0%、特に男性20代で顕著
正社員の副業実施率は、2023年調査までは微減傾向だったが、今回は4.0ポイント上昇し、過去最高の11.0%となった。副業実施率を性年代別に見ると、若年層の上昇傾向が確認されており、特に男性20代でその傾向が顕著であった。
副業理由が「収入補填」から「キャリア形成・自己実現」へシフト
「副収入を得たい」「本業の収入だけでは不十分」「将来的な収入に不安がある」といった収入補填の理由が上位であるが、そのスコアは2023年調査よりも減少。一方、「副業で好きなことをやりたい」「趣味を仕事にしたい」「自分のスキルがほかの場所でも通用するか試したい」といった理由は2023年調査よりも上昇していることが分かる。
なお、「副収入を得たい」「本業の収入だけでは不十分」「将来的な収入に不安がある」といった収入補填の理由は減少傾向である。
副業を行う理由の推移を年代別に確認し、特徴的な項目を掲載した。次の2項目のスコアは特に20代で高く、上昇トレンドも見られる。副業を行っている20代は、本業に対して自己実現や理想とするキャリア形成のすべてを期待・依存していない様相がうかがえる。
副業の時給、平均値で3617円
副業の時給は2025年調査で平均値3617円、中央値2083円。調査開始以降、最も高い水準となった。
副業経験者の6.7%が副業先に転職、20代は13.6%
副業経験者の6.7%が「副業先の企業へ転職した経験がある」と回答した。その経験率は若年層ほど高く、20代では13.6%となっている。
受入企業の55.6%が「(他社の)副業人材が自社に転職してきたことがある」と回答
副業先(副業受入企業)側に、「(他社の)副業人材が自社に転職してきたことがあるか」を質問すると、「副業転職あり」の割合は2023年よりも7.0ポイント上昇し、55.6%という結果となった。副業転職者の割合が近年増えている可能性が示唆される。
副業転職者の現在の働く幸せ実感、ワーク・エンゲイジメントについて確認したところ、いずれも通常転職者と比べて高い傾向にある。
過重労働の実態
1ヵ月当たりの副業活動時間は平均23.0時間。年代別では若年ほど、副業活動時間が長い傾向にあった。
過重労働が過去最高水準
個人調査・企業調査ともに、副業実施者が過重労働に陥る割合は、調査開始以降最も高い傾向となった。
本業(残業)+副業45時間超は3割、その半数は未申告
雇用契約を結ぶ副業の場合、健康保護等の観点から本業と副業の労働時間を通算して、法定労働時間の順守状況を確認するルールが課される。上記の副業活動時間と本業における残業時間を通算したところ、合計が45時間以上の割合は3割を超えており、その内の半数以上が「本業先に副業を行っていることを報告していない」結果となった。
業務委託による副業の「労働者性」の問題が顕在化
業務委託の副業を行う個人の中には、実態として労働基準法上の「労働者」に該当する働き方をしているにもかかわらず、名目上は自営業者として扱われ、労働基準法等に基づく保護が受けられていないといった「労働者性」の問題がしばしば指摘されている。同調査では、厚生労働省が公表しているチェックリストの内容をもとに、「労働者性」の実態について調査した。
チェックリストの各項目の労働者性スコアを算出した後、業務委託による副業実施者を類型化したところ、次の4タイプに分けられた。「自律型ワーカー」タイプは、労働者性スコアが低く、業務委託の働き方の実態に即した安全層と解釈できる。そのほかの3タイプは、「労働者」と判断されるリスクの高い層であり、全体の55.2%を占める。
副業実施者の雇用形態に関する理解度
副業実施者に対して、副業の雇用形態に関する理解度を聞いたところ、主観的に「理解している」と答える層は7割を超えた。しかし、同調査で提示した2問のケーススタディをすべて正解した割合は2割に満たず、正答率は42%と低い結果となった。
副業の雇用形態に関するケーススタディ正答者は、不正答者よりも「労働者性」が低く、「業務委託契約時の交渉率」が高い。副業を行う個人のリテラシーを向上させることが、「労働者性」の問題に対して有効である可能性が示唆される。
契約交渉の実態
業務委託契約時の交渉の実態について確認した。契約時に内容の修正・変更を求めなかった割合は約7割。その理由を見ると、何らかの疑問・不満があった層が5割を超える結果となった。
なお、調査の概要は次のとおり。
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