4. 訴訟になる前に取っておくべきだった対応(予防策)
(1)冷静な対応
まずは事実確認の徹底(本人ヒアリング、通勤実績・定期購入記録の確認、経路変更の経緯の把握)を行い、感情的に処分しないことが大切です。
そのうえで、事実が認められたら、差額返還について合意し、懲戒解雇ではなく、始末書提出・厳重注意または戒告といった処分を行うといった対応をとるべきでした。
(2)解雇無効とバックペイのリスク
懲戒解雇が無効と判断されると、労働契約上の地位が存続するため、解雇日から判決確定までの賃金支払義務=バックペイが発生します。
解雇までの期間が長引けば、バックペイによる賃金総額は不正受給額を大きく上回る可能性があり、企業にとって損失が極めて大きくなります。
職場の信頼関係の悪化、組合との争いの長期化、対外的な評判リスクも伴います。
「不正行為=解雇」ではなく、上記のように冷静な対応を積み重ねて、トラブルの回避を図ることが重要といえます。

