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2026年2月5日(木)@オンライン

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未来へ駆動する「戦略人事」のヒント:AI時代の人・組織・制度を考える | AI時代の人事の役割「AIマネジメント」

AIを「働く仲間」として雇う時代——人材マネジメントの発想でAIを管理・運用する“人事の新しい仕事”とは

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人材マネジメントの発想でAIを運用する――“AIマネジメント”の基本サイクル

 AIが「働く仲間=Workforce」のように機能しはじめるのであれば、AIに対しても、人材マネジメントに近い考え方で運用設計をする必要があります(図4)。整理すると、次のサイクルです。

  1. 採用:数多くのAIモデルから、自社業務に最適なモデルを選択する。汎用モデルか特定領域特化か、精度・速度・コスト・倫理適合性などを比較し、人材ならぬ最適な“AI材”を選ぶ。
  2. オンボーディング:社内用語、ルール、データ、業務手順を学習させ、組織の文脈で働ける状態にする。RAGやプロンプトチューニングは、この段階にあたる。
  3. 評価・配置:アウトプット品質、処理速度、コスト効率、利用率などで評価し、期待成果が出ない場合は改善や再配置(異なる業務への適用)を検討する。
  4. 代謝:性能低下やより適したモデルの登場に応じて、利用停止や交代を行い、必要に応じてナレッジを引き継ぐ(人でいう退職と後任引継ぎ)。
図4:AIにおけるEYのタレントマネジメントモデル
図4:AIにおけるEYのタレントマネジメントモデル
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 ポイントは、「AIだから特別なことをする」のではなく、人と同じように“採用・育成・評価・配置・代謝”のサイクルを回すことです。これができて初めて、AIはPoC[1]から「組織能力」へ移行します。逆にいえば、ツール導入が進んでも運用が設計されなければ、現場は「使いどころが分からない」「責任が曖昧で怖い」という状態に戻ってしまいます。

[1]: Proof of Conceptの略。日本語で「概念実証」の意味。

 実務上は、「運用責任者(オーナー)を置く」「品質とリスクの評価指標を決める」「利用ログと改善サイクルを回す」、この3点が最低限の運用基盤になります。AIは1度入れれば終わりではなく、業務・データ・モデルの変化に合わせて「更新」され続ける資産です。だからこそ、運用を「プロジェクト」ではなく「定常業務」として扱うことが重要になります。人事がこの前提を押さえ、現場が安心して使えるルールと、成果が見える仕組みを整えることが、全社展開の成否を分けます。

全員教育から推進役づくりへ――AI時代に重要な能力「デジタルフルーエンシー」を見極める

 いま多くの企業で、「AIリテラシーを全社員が身につけよう」という取り組みが進んでいます。もちろん、AIを理解することは重要です。しかし、AIを学ぶことと、AIを組織として生かしきることは別の次元の話です。先進企業は「全員に教える」だけでなく、「誰に、どの役割として投資するか」を明確にしています。

 たとえばオラクルは、AI時代に対応する組織体制を強化するため、クラウド領域と産業用AIアプリケーション領域という異なる専門性を持つ2名を共同CEOに任命しました。AIの専門性を役割として組織構造へ織り込むというアプローチです。

 Amazonも大規模なスキル投資を行っていますが、対象を“全員”には広げていません。クラウドエンジニアやデータサイエンティストなど、事業価値に直結するAIネイティブ層に重点投資を行っています。

 さらにTCS(タタ・コンサルタンシー・サービシズ)[2]は、全世界の従業員の2%を削減しつつ、AI導入後に再配置やリスキルを行う対象を整理しました。スキルキャッチアップが難しい層は、無理にリスキルを強制せず、役割再定義や再配置を進める方針を示しています。

[2]: インド発のグローバルIT企業。

 背景にあるのは、「テクノロジーの変化に、全員が同じペースで追いつくことは難しい」という現実認識です。一方で日本企業には、「落ちこぼれを出さず、全員を底上げする」という文化があります。ただAI時代においては、全員を同じ方向に、同じスピードで育てようとすると、結果として誰も十分に深い活用スキルを持てないという可能性があります。AI時代の人事は、組織として成果につながる学習と投資、またその機会を提供・リードする人(推進役)を選ぶ役割へと変わりつつあるのです。

 では、推進役をどのように見極め、育てていけばよいのでしょうか。私は、その鍵が「Digital Fluency(デジタルフルーエンシー)」にあると考えています(図5)。デジタルフルーエンシーとは、特定ツールの操作習熟ではなく、新しい技術を前向きに受け入れ、素早く試し、実務に適応させて成果に変える能力です。

図5:デジタルフルーエンシー
図5:デジタルフルーエンシー
[画像クリックで拡大表示]

 実務に落とすと、主に次の3つに整理できます。第1に、情報を評価し活用する力。第2に、技術への適応能力。第3に、創造性と問題解決能力です。AIを「置き換え」ではなく「価値創出」に使えるかどうか——この差が、AI活用を効率化で終わらせるか、変革に昇華させるかを分けます。

 そして重要なのは、これらの力は受動的な学習では身につかないという点です。だからこそ、先進企業ほど「評価軸の再設計」を進めています。新しいAIツールを自発的に試し業務改善につなげた経験、活用方法を他部門へ展開した貢献、継続的に学び知識を更新している姿勢——こうした行動ベースの項目を評価に組み込み、挑戦を促す環境を整えています。

 育成面では、推進役を「育成対象」として囲い込むのではなく、現場課題を起点に小さく試し、成功パターンを横展開できるコミュニティをつくることが有効です。人事が「場」を設計し、現場の試行錯誤を支援することで、個人の学習が組織の学習へ変わります。

 技術変化に社員が追随できず、スキルギャップが拡大すれば、AIは導入されても現場に組み込まれずPoC止まりのまま終わります。AI時代において価値を持つのは、「何を知っているか」以上に、「どれだけ早く学び、どれだけ柔軟に適応できるか」です。人事としては、推進役を見極め、育成し、評価制度の中心に据え、AIを業務変革として前に進めること。文化と推進役の設計こそが、人事へ求められる最も重要な役割だと考えています。

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未来へ駆動する「戦略人事」のヒント:AI時代の人・組織・制度を考える連載記事一覧
この記事の著者

髙浪 司(タカナミ ツカサ)

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・コンサルティング アソシエートパートナー
外資系コンサルティングファームを経て現職。ファイナンスやM&A領域で培った知見を基盤に、人事戦略策定やAIを活用した業務効率化・高度化等のプロジェクトの支援に従事している。一般社団法人ピープルアナリティクス&a...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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