女性の管理職・経営層を増やすにはCEOの決断が肝心
——ご自身が社会に出られた1980年代から現在まで、女性が働く条件・環境はどのように変わってきたとお感じですか。
社会や企業の文化は、確実に変化してきたと感じます。かつては「女性は家事・育児」「男性は主戦力」という固定観念が当たり前で、部長クラスの女性管理職はほとんど存在しませんでした。その前提に対して「なぜなのか」と疑問を口にすること自体が異端視されていた時代です。1980年代までさかのぼらなくとも、私が日産に入社した2002年のインタビューでは、「ご主人は家事を“手伝う”のですか」と質問を受けたほどでした。
現在では、こうした表現は慎重に避けられるようになり、性別による役割分担は望ましくないものだという認識が広がっています。男性の育児休業取得など、制度面の整備も大きく進みました。
しかし、それでもなお、人材登用の意思決定の場面には多くの無意識のバイアスが残っています。たとえば、海外赴任のように多くの知見や経験を得られる機会について、「子どもがいる女性には難しいだろう」と先回りして判断してしまう一方で、男性は家族の状況にかかわらず「行くのが当然」とされがちです。昇格候補だった女性が妊娠すると、自動的にリストから外されることも頻繁にみられます。
こうした判断の多くは、決して差別とか悪意から生まれているわけではなく、時には思いやりのつもりで行われています。しかし結果として、それが女性の機会損失となり、キャリア形成に影を落としていることは否めません。
星野 朝子(ほしの あさこ)氏
西荻経営塾 塾長/株式会社東京女子経営塾 代表取締役
日産自動車にて長年にわたり要職を歴任し、日本人女性として初めて執行役副社長に就任した経歴を持つ。マーケティングや戦略立案において卓越した手腕を発揮し、企業の変革を牽引してきた。2026年4月、これまでの経験を活かし、次世代の女性リーダーを育成する「西荻経営塾」を開校。自らが塾長となり、日本企業の変革を担う女性経営者の輩出を目指している。
——確かに、女性の就業率は過去最高の74.1%となり、84.5%という男性の87.7%にまで上がっています[1]。それにもかかわらず、女性の管理職比率は13.1%[2]、女性役員比率は17.7%[3]と依然高いとはいえない状況です。その原因はどこにあるのでしょうか。
注
[1]: 男女共同参画局「2-1図 女性就業率の推移」
[2]: 厚生労働省「令和6年度 雇用均等基本調査結果のポイント(概要)」
[3]: 男女共同参画局「令和7年度『上場企業の役員に占める女性割合等に関する調査概要・調査結果』」
原因は決して1つではなく、これまでお話ししてきた固定観念に加え、企業文化や制度、評価の仕組みなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。これらを1つひとつ現場レベルで解消していくのは、正直なところ容易ではありません。
だからこそ、女性の管理職・経営層を本気で増やしていくには、「CEOの決断が肝心」だといえるのです。実際、上場企業などを見ても、トップが腹落ちしたうえで推進している企業では、着実に成果が表れています。固定観念を含む企業文化や風土、制度といった根深い課題に向き合うには、トップ自身が明確な意思とパワーをもって取り組むほかありません。
そう言うと、HRzineの読者である人事部門の方々は、落胆されるかもしれません。しかしだからこそ、人事部門には腹をくくって、トップのコミットメントを取りにいってほしいのです。あの手この手でデータや事例を示し、粘り強くプレゼンを重ね、経営トップを納得させる。その役割を担えるのは、人事部門しかありません。
まず重要なのは、意思決定の場に女性が参画することが、自社にとってプラスになるという点を、経営陣にきちんと理解してもらうことです。企業にとって、女性の昇進や抜擢の最大の目的は、あくまで「競争力を高め、収益を上げること」にあります。男女平等や労働者の権利といった視点ももちろん大切ですが、企業は営利を目的とする組織であり、あらゆる意思決定は最終的に利益につながらなければなりません。
つまり、女性登用は「目的」ではなく「手段」です。しかし、この点を取り違えている方は少なくありません。「女性を活躍させるため」ではなく、女性が活躍することで「収益を上げるため」なのです。

