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インタビュー《人材育成》| 女性活躍

女性管理職・経営層の育成と抜擢 人事は腹をくくってCEOのコミットメントを取り候補者選定に介入せよ

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女性への忖度も優秀人材の囲い込みもしない抜擢人事を仕掛けよう

——一方で、女性を積極的に登用・抜擢する仕組みに対し、「優遇されている」と批判する声も耳にします。

 アファーマティブアクションやクオータ制をめぐる議論の中で、「能力のない人物を、女性というだけで起用するな」という声があることは承知しています。ただ、それも仕組み次第でしょう。候補者リストに女性を積極的に登録していく仕組みは、決して下駄を履かせるものではありません。固定観念や無意識のバイアスによって見過ごされてきた優秀な女性を、きちんと可視化するためのものです。試験に挑戦して結果が出なければ、また再チャレンジすればいい。その点は男性と何ら変わりません。

 もし「女性は男性に比べて経験値が低い」と感じている人がいるとしたら、一度立ち止まって考えてほしいのです。その人の能力や意欲に見合った評価やポジションを、これまで本当に与えてきたのかと。多くの女性は、何度も「女性だから」という理由で後回しにされ、モチベーションを削がれてきました。その結果、優秀で着実にキャリアを積んでいるように見えても、ここぞというハードな案件や修羅場には声がかからず、成長や人脈形成の機会を得られないままになります。一方で、たとえ2番手であっても男性のほうがそうした経験を積み、部長や役員候補になるころには大きな差が生まれてしまいます。

——女性を将来のリーダーとして経験をさせていくことは、男女を問わず、覚悟を持って責任の大きな仕事に取り組む人材を育成することの一環ということですね。

 そうです。だから日産では、私は常に“Be tough on woman(女性に忖度しない)”と呼びかけてきました。その結果、妊娠中だった課長候補の女性は打診に応じ、産後3ヵ月で職場に復帰しましたし、海外赴任を期待されていた女性も、3人の子どもと実母を伴って現地に赴くことができました。いずれも、「事情のある女性だから」と忖度され、声がかからなくなりかねないケースでしたが、私のメッセージを思い出した上層部が、あえて意識的に打診したことで、本人たちはそのチャンスを活かすことができたのです。打診した部門長たちは、彼女たちの予想外の承諾に、そのときの驚きと喜びを、わざわざ私にお話ししてくれたほどでした。

 そして、こうした事例を社内外に発信していくことも重要だと考えています。子どもを連れての海外赴任は、約20年前には珍しく、取材を受けるほどの出来事でした。しかし今では、同様の事例は確実に増えています。もはや特殊なケースではなく、どの企業にも起こり得る選択肢であることが伝われば、組織の意識も変わっていくでしょう。それは、次に続く女性たちへの強いメッセージにもなります。

 そもそも「経験を積ませる」という観点では、男女を問わず、日本企業は抜擢人事があまり得意ではありません。一方で海外メーカーでは、本当に優秀だと判断した人材には、年次や年齢、性別に関係なく、早い段階で責任ある仕事を任せます。たとえば、20代でブラジル事業のヘッドを任せるといったことも、決して珍しくありません。そうした経験を重ねた人材は、40歳前後になると、まったく異なる“厚み”を持つようになります。

 それに対して日本では、優秀な人ほど本社の“手元”に囲い込もうとする傾向があります。しかし、どちらのキャリアが将来のリーダーにふさわしいかは、明らかではないでしょうか。この差は、個人の能力というよりも、「誰に、どのタイミングで、どれだけの責任を与えたか」という、企業側の判断の違いによって生まれるものです。

 だからこそ、忖度されがちな女性の抜擢が難しい現実を踏まえつつ、部門ごとの優秀人材の囲い込みを避けるためにも、CEO主導での引き抜き配置を許容したり、経歴の厚みやネットワークを形成するためのストレッチ機会を戦略的に配分したりする。そうした意図を持った抜擢人事を、仕掛けていく必要があると思います。

——最後に女性活躍の推進に取り組む企業、人事パーソンに向けてメッセージをお願いいたします。

 CEOが本気で推進しようとしているのであれば、あとはやるだけです。逆に、まだ本腰が入っていないのであれば、まずは説得から始めてください。女性活躍を「正しいこと」「やらされ仕事」として捉えるのではなく、企業の競争力を高め、成果につなげる経営戦略として腹落ちしてもらうことが何より重要です。

 その役割を担えるのは、人事部門しかありません。データや事例を示し、同業他社との比較を行い、時には粘り強く、時には覚悟を持って、トップのコミットメントを取りにいってほしいと思います。簡単なことではありませんが、組織を人事から本当に強くしたいと願うのであれば、そこは逃げずに向き合うべきところです。

 繰り返しますが、女性活躍や男女格差の解消は、それ自体が目的ではありません。あくまで、企業が成長し続けるための「手段」です。その本質を見失わず、成果にこだわりながら取り組んでいけば、必ず組織は変わっていくはずです。

——力強いメッセージをありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

北浦 汐見(キタウラ シオミ)

都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...

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