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インタビュー《人材育成》| 女性活躍

女性管理職・経営層の育成と抜擢 人事は腹をくくってCEOのコミットメントを取り候補者選定に介入せよ

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昇格・昇進試験を受ける候補者リストの作成には人事も関わる

——女性の管理職や経営層が増えることのメリットを、どのように伝えたらよいのでしょうか。

 その理解を促す材料は、すでに数多く存在します。国内外の調査や研究によって、女性の活躍が企業業績に与える影響は繰り返し示されています。マッキンゼー・アンド・カンパニーや大和総研、IMF(国際通貨基金)などのレポートを整理して示すのも有効でしょうし、同業他社と比較しながら自社の現状を可視化することも、経営陣の腹落ちにつながります。

 なぜ、女性の活躍や昇進が事業利益に結び付くのか。その理由は1つではありません。たとえば、多様な視点が意思決定に取り入れられることで、均質な集団にありがちな偏った思考の罠に陥りにくくなります。先行きの見えない混沌とした時代において、多様性は問題解決力を高め、イノベーションを生み出す組織の重要な鍵となります。

 また、男女を問わず、成果を上げた人が正当に評価され、昇進していく環境では、社員1人ひとりのモチベーションが高まり、スキルアップや突破力にもつながります。すでに社員のほぼ半数を女性が占めている現在、その力を十分に引き出すことができれば、企業にとって大きな成長余地があることは明らかでしょう。

——ロジカルに女性の活躍が事業利益につながることを示しても、なかなか腹落ちできない方は少なくありません。特に中高年の男性に多い印象があります。

 自分自身の成功体験が、男性同士で働いてきた経験に強く依存しているからではないでしょうか。高度成長期から2000年頃までは、均一的な価値観の下で働き方を集中的に最適化したほうが、成果を出しやすかった時代でした。労働人口が十分に確保されていれば、気合と根性で24時間365日働いてくれる人材のほうが、企業にとっては都合がよかった。その役割を担ってきたのが、生活面を女性に支えられていた男性たちです。そうした成功体験を持つ人が管理職や経営層に回れば、自分と似たタイプの人材を引き上げてしまうのは、ある意味で自然なことだと思います。

 その結果、現在の若い男性に対しても、「管理職を断るとはけしからん」「育児休業を取るなんて、出世する気がないのか」といった不満を抱く人が少なくありません。ただ、価値観が多様化したいま、会社第一主義を押し出せば押し出すほど、公私ともに充実させたいと考える人ほど離れていってしまうでしょう。これから労働人口が減少していくなかで、その姿勢のままでは、組織を維持・成長させることは難しくなります。

 ここで勘違いしてほしくないのは、これは男女の問題ではなく「多様性」の問題だということです。多様性は、組織がこれからの不確実な時代を生き抜くうえで欠かせない要素です。重要なのは、「女性だから」「外国人だから」「障がいがあるから」と属性で一括りにするのではなく、1人ひとりが持つ価値観や経験、強みの違いを前提に組織を設計することです。働き方や役割においても可能な限り柔軟に対応し、個々の事情や意欲を尊重する。その姿勢があってこそ、人は大切にされていると感じ、組織への帰属意識や責任感が育まれていきます。

 賢明な経営者であれば、自身の固定観念や限定的な成功体験から一歩離れ、多様性の重要性を理解できるはずです。それでも難しい場合には、従来のやり方を尊重して存続させつつ、副社長など他の経営陣とともに、新しいやり方に挑戦してみてもよいでしょう。その際には、KPIを売上や収益に紐づく数字として設定し、従来との違いを客観的に検証することが重要です。「やって終わり」ではなく、必ず成果につなげる。繰り返しますが、男女格差のない組織をつくることは、あくまで「目的ではなく手段」なのです。

——具体的には、どのような施策が有効なのでしょうか。スピーディーに実施するための工夫や仕組みがあればお聞かせください。

 企業によって制度は異なると思いますが、昇格・昇進試験を受ける候補者リストの作成は非常に重要なポイントになります。このリストは部門長や課長が人事部とともに作成しているという企業が多いと思いますが、ここを人事部門が強くリードすれば、スピードを上げられるでしょう。女性を最低1人は昇格候補のリストに入れるということを課している企業が増えてきましたが、「1人」ではなく3割、4割と設定して目線を高めてもらうこと、それによって現場の長たちに、女性の育成にもっと本腰を入れないとダメだと思ってもらうこと、そのための抜擢人事を提案することなど、人事からできる後押しはいろいろあると思います。そして、現場の反発を最小限に抑えるためにも、トップの明確なバックアップが必要です。

 私が日産で国内営業部門の本部長に就いたとき、私の直属は全員が男性で、その下の部長の階層にも女性は1人しかいませんでした。さらに、新たな部長の候補者リストを確認すると、そこにも女性の名前が一切なかったのです。私はそのリストを見て、「女性が1人も入っていないのはおかしい」と差し戻しました。ここで初めて、人事部門が現場の意見に対して、強く介入できる状況が生まれました。

 その結果、ようやく部長候補として女性が2名リストに加わったのですが、理由を聞いて驚かされました。2人とも業績評価は抜群で、2年連続トップの評価でした。それにもかかわらず、1人は「若すぎる」、もう1人は「出産後に時短勤務をしているから」という理由で外されていたのです。年齢制限も、時短勤務では部長になれないというルールもありません。本人が望まないのではないか、と思っての配慮だったようですが、もちろん、本人たちには意思確認すらされていませんでした。実際に打診してみると、2人とも「ぜひやりたい」と快諾し、結果的に昇進試験では彼女たちがリストの上位を独占しました。また「時短で働いているのに評価がトップ」ということの価値を、人事のみならず、現場の部長職・執行役員たちに、もっと理解してもらいたいと思ったことも強く記憶に残っています。

 他にも、妊娠を理由に課長候補から外されたり、子どもが生まれたことを理由に海外赴任の打診すらされなかったりするケースがありました。しかし、実際に確認してみると、いずれも本人の意欲は十分で、家庭や業務の調整を行う力も備えていました。それにもかかわらず、現場の固定観念や過剰な思いやりによって、「本人にやる気がないこと」にされてしまっていたのです。

 こうした事情はCEOの目からは見えにくく、現状の説明が「女性の候補者がパイプラインにいないから」という認識につながりがちです。だからこそ、CEOの明確な後押しを得たうえで、CHROや人事部門が候補者選定のプロセスに介入することが不可欠です。

次のページ
女性への忖度も優秀人材の囲い込みもしない抜擢人事を仕掛けよう

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

北浦 汐見(キタウラ シオミ)

都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。

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市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...

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