属人的なケアの限界…… 「個に寄り添うAI」で3万人の離職防止に挑む
早期離職率の減少という明確な効果をもたらしたこども事業におけるオンボーディングサーベイ。しかし、このままの体制で伴走を続け、同時に規模を拡大していくことは難しいと菅野氏は述べた。
「本社のスタッフが未回答者を追いかけ、スコアを見て個別に対話を重ねる運用は、3万人規模の組織に展開するには限界があります」(菅野氏)
そこで、ソラストが見出した次なる一手が、生成AIの活用だ。
同社のオンボーディングサーベイをはじめとした取り組みは、どのような傾向を持つ従業員に対して、どのような言葉をかけ、どう対応すれば定着につながったのかというデータがシステム上に蓄積されている。これを生成AIに学習させることで、人間が行っていたケアをエージェント化しようという試みである。
最後に登壇した西垣氏は、ソラストで展開しているAIエージェント「『個』に寄り添うAIコンシェルジュ」のプロトタイプとして2つの機能を紹介した。
西垣 智裕(にしがき ともひろ)氏
アビームコンサルティング株式会社 Intelligent Operational Excellence Business Unit / ABeam Intelligent Center Leader, Executive Officer, Principal
監査法人にて会計監査・内部統制・IPO等に従事。その後、外資系IT企業にてAI含むAutomation事業責任者を務める。現職ではAIエージェントを中核とした業務変革を推進し、構想策定から運用まで一貫した支援をリードするとともにクアルトリクス等を活用したBPaaS (Business Process as a Service)事業を推進している。
1つ目は、社員の意図を汲む「24時間相談窓口」である。入社間もない新入社員は人事へ相談しづらいという心理的ハードルがあるが、365日24時間、業務の疑問から人間関係の悩みまでを聞いてくれるAIであればアクセスしやすい。
このAIは、一般的な回答を出力する汎用のチャットボットとは異なり、社内ルールに基づいて回答する業務マニュアル回答モードや、悩みに真剣に耳を傾けるお悩み相談モードなど、ユーザーの意図を判定して適切に振る舞う。ソラストの社内規程や過去の対応ノウハウを学習しているため、個別の状況に寄り添った的確なサポートが可能になるという。
2つ目は、離職予防を実現する「こころのダッシュボード」だ。エンゲージメントサーベイやオンボーディングデータ、相談窓口に寄せられた自由記述の悩みなどをAIが統合して分析し、優先的にケアが必要な人物をリストアップする。
たとえば、過去3ヵ月でモチベーションが低下している従業員がいた場合、「園長とのコミュニケーション量が低下しているからだ」と原因を特定し、「週に1回5分だけでも園長との時間をつくるとよい」といった対応策までをAIが提案してくれる機能だという。
現場の声を拾い上げ、本社スタッフの伴走によって早期離職の減少を実現したソラスト。彼らが次に挑むのは、人間が培った「個に寄り添うケア」を、生成AIによって3万人の組織へ拡張する試みだ。
置き去りにされがちだったエッセンシャルワーカーたちのエンゲージメントを、テクノロジーの力でいかに引き上げるのか。現場と本社の分断を埋めるソラストの最前線の挑戦を、今後も注視していきたい。

