自社のビジネスモデルや業務領域から各自に必要な技術を理解する
組織的にデータ分析を行うときには、プロセスにも注意が必要だ。摂待氏らが支援してきた経験をもとに、多くの企業の分析チームを見ると、プロセスの中に2つの障壁があるのだという。その1つは課題設定が不十分なまま分析に進んでしまうこと、もう1つが結果を施策に落とし込めないことだ。
なぜそうなるのか。摂待氏は「企業内のビジネス課題とデータ分析プランの整合性が取れていないから」と説明する。データ分析で重要なのは、入口に当たる課題設定と出口にあたる施策の定義であり、「分析作業そのものよりも前後を意識することが重要」と加えて訴えた。
また、データ分析のプロセスの進め方は、試行錯誤を繰り返す「螺旋(らせん)フロー型」であると摂待氏は指摘する。プロジェクトのフェーズは「ビジネスの理解」「データの理解」「データの準備」「モデリング」「評価」「展開」で構成されるが、順番は厳密ではなく、必要に応じてフェーズ間を行き来して作業を行うことが多い。それなのに、ウォーターフォールのイメージで順序正しく進めようとすると、多くの場合、ビジネス現場が求めているアウトプットを出せないままプロジェクトがタイムアップになってしまうという。
なお、摂待氏はデータ分析を教える中で、エンジニアは真面目で勉強熱心な人が多く、多様な技術を習得することがビジネスで価値を出すことにつながると考える傾向が強いことにも気づいたという。その結果として、ビジネス課題の本質や分析結果の活用法に目が向かなくなることを指摘する。そうならないようにするには、「自分たちの会社、チームが向かうべきビジネスゴールを明確化すること」が重要と摂待氏は述べ、「それが分かれば、自分に必要なスキル(データ分析知識・技術)が見通せるようになる」とアドバイスをした。
これまで問題解決力(知識やスキル)を身に付けることに専念してきたエンジニアは多い。これからは解決だけに注力することなく、課題の発見に長けたビジネス側の人材と同じチーム内でコラボレーションをすることが必要になる。最後に摂待氏は、データ分析のスキルを身に付けて、成長したいと考えるエンジニアに向け、自社のビジネスモデルや業務領域についての理解を深めること、ビジネス全体の目的や自分の関わる業務の意味合いから自分に必要な技術を理解することの重要性を訴え、「真のビジネス成果につながるスキル習得に努めてほしい」とエールを送って、講演を終えた。