定年後研究所は、2021年4月に予定されている「改正高年齢者雇用安定法(以下、70歳就業機会確保法)施行に備え、中高年社員に関する大手企業の課題意識や取り組み実態を明らかにするべく、企業人事部へのヒアリング(インタビュー)調査を実施。また、これまで行ってきたニッセイ基礎研究所との共同研究結果レポート(「企業と中高年社員の『新しい関係』構築に向けて(報告書)」)をまとめ、発表した。調査時期は2020年7月~8月。
企業人事においては、コロナ禍にあっても「中高年社員対策」は避けることができない構造問題と認識されており、ヒアリングを行ったほとんどの企業が今後「ボリュームゾーン」となる50代以降社員の活性化・戦力化に向けた取り組みを早急に対処すべきと考えている。当ヒアリング結果を裏付けるデータとして、92.2%の企業人事担当が「50代以降社員に対するキャリア形成支援が必要」と回答している。
一方で、中高年特有の「変化を嫌う安定志向」を変えるための効果的な方策が見出されておらず、従来の年功的処遇、フルタイム勤務など「一律的なメンバーシップ型の制度・運営」の限界を認識しつつ、脱却には踏み込めていない状況がうかがえる。
来年4月施行の70歳就業機会確保法に関しては、ヒアリング実施時点においては概ね「検討中」とのことだったが、具体的には現行65歳までの「再雇用制度」をさらに延長する方向で検討する企業が多かった。また、当該層の在籍期間長期化を視野に、活躍ポストについて「社外を含めた選択肢の拡大が必要」とする意見や「フリーランスやボランティア等が実際の活躍領域になりうるのかどうか検討中」の企業も存在した。
企業ヒアリング結果などを踏まえれば、今後、企業が中高年社員への対策として留意すべきことは、①「中高年社員をコア人財として捉え、社外も含めた職務開発・活躍領域の拡大」、②「個人の自律的なキャリア選択を尊重した選別・配置」の2点であり、ポストコロナ時代を見据え、雇用という形態のみにこだわらず社外における就労も視野に入れた「個人の選択」と「企業の選別」をマッチングさせる「企業と中高年社員の新しい関係」、すなわち「中高年社員版ジョブ型」を志向すべきと考えられる。
中高年社員版ジョブ型を導入する際には、当該層の自律的なキャリア形成を促す「行動着手支援」が不可欠となるが、企業人事部へのヒアリングでは、中高年社員への「キャリア研修」の実施時期が従来より前倒し傾向になってきているとともに、個人ごとのキャリア面談を組み合わせる事例なども増えてきていることが判明。定年後研究所は、70歳就業機会確保法への対応を視野に、当該層のスキル・能力・経験・適性・価値観等、個々社員の「したいこと」「できること」を見える化し、モチベーションアップにつなげる踏み込んだ取り組みがいっそう求められると述べている。