リクルートマネジメントソリューションズは、20代~50代の1年以上学びを継続している会社員489名に対し「会社員の自律的な学びに関する実態調査」を実施し、「興味を持ち取り組んでいる学びの内容」や「自律的な学びを継続するための方法」など、調査結果から見える実態について公表した。調査期間は2020年11月27日~29日。
学びの内容を調査[1]した結果、「語学/仕事系[2]」が約4割、「生活/文化系[3]」が約6割、小分類では多い順に「スポーツ・健康」「語学」「ビジネス知識・スキル」となった。
興味を持ち取り組んでいる学びの領域について、属性別に特徴が見られたのは、年代、職種だった。年代別に見ると、「語学/仕事系」は20代から30代で増加し、いったん40代で減少するが、50代で再び増加しており、「生活/文化系」はその逆だった。かつては引退間近と考えられた50代でも、「語学/仕事系」の学びが必ずしも低下しないことを示唆している。
職種別に見ると、開発職で「語学/仕事系(特に語学、IT・情報処理)」が多く、営業・サービス職で「生活/文化系(特にスポーツ・健康)」が多い傾向が見られた。携わる仕事により、学びの必要性や興味の対象が異なる可能性がある。
1年以上継続している学びの内容と続けている理由について、自由記述からは、英語学習やランニング、ジムなどが比較的多く見られた。それ以外にも、それぞれの仕事や生活の環境に応じて多岐にわたるテーマを選択し、こだわりや面白さを感じながら学びを継続していることが見てとれた。
学びの頻度については、週に4日以上が27.0%、週に2~3日が32.7%だった。学びの頻度は、学びの領域ごとに違いが見られ、特に頻度が多いのが「語学」「IT・情報処理」、比較的少ないのが「生活」「文化・芸術」だった。学びの継続期間については、1~3年が41.9%と最も多く、ついで5年以上が38.7%だった。学びの継続期間は、5年以上が半数以上と多いのが「文化・芸術」「スポーツ・健康」。1~3年が半数以上と多いのが「ビジネス知識・スキル」「IT・情報処理」「金融・投資」だった。適切な学びのペースや期間は、取り組む対象の特性や取り組みの目的により異なると考えられる。学びの領域を選ぶのと同様、ペースや期間についても、選択的にコントロールしていく必要がある。
学び始めた理由・きっかけについては、「語学/仕事系」では、「今の仕事に役立てたいと思った」が5割以上、「将来の仕事に役立てたいと思った」が4割以上と実用的な動機から始めた人が多かったが、「面白そうだと思った」という興味的な動機も4割弱見られた。「生活/文化系」では、「面白そうだと思った」が5割以上と多く見られたが、「たまたま触れる機会があった」「人から誘われた」という浅い興味から始めた人も2割程度いた。
同調査は「1年以上にわたり学びを継続している」人を対象としているが、全体の約6割が「1年以上継続することなく一過性に終わったことがある」と答えた。その理由の自由記述には、「忙しくて時間がとれない(25.2%)」「成果が感じられない、難しすぎた(14.1%)」「コロナで通えない、生活がかわった(10.5%)」といった回答があった。生活状況が変わったり、期待するものと違ったりした場合は、柔軟に次の機会や対象へと行動を変化させていくことも必要である。
取り組んでいる学びから得られているものとして、「語学/仕事系」「生活/文化系」ともに「そのことに取り組むのが楽しいと感じる」「自分が上達したり成長したりするのを感じる」が多く、楽しさや成長を感じていることが分かった。「語学/仕事系」では、「仕事や生活に役立つ」「収入アップや仕事の獲得につながる」という仕事上の実用性や「周囲から一目おかれる」という優越感、「新しい知識が獲得できた」「新しいものの見方ができるようになった」という能力の獲得実感において高い傾向があった。「生活/文化系」では、「毎日が楽しくなった」という情緒的な満足感や「その話題になるとたくさん話せる」という関係性の充実感が高くなっていた。当初の動機やきっかけから、興味を広げたり深めたりしながら、複合的なプラスの変化を獲得することで、学びが継続していくと考えられる。
一般的に自律的な学習を促すと考えられる方法である、「目標や見通しを持つ(プランニング)」「行動や認知を自己管理する(コントロール)」「振り返りと調整を行う(モニタリング)」「仲間や指導者との関係性を構築する(リレーションシップ)」について、どのくらい行っていたかを、学びが継続したときと、継続しなかったときについてそれぞれ尋ねたところ、「語学/仕事系」「生活/文化系」のいずれも、学びが継続しなかったときに比べて、すべての項目が高い結果となっており、これらが継続のカギであることを再確認できた。
継続したときと継続しなかったときで、特に差が大きかったのは「すでにある程度の興味や知識がある領域である」「自分がより興味を持てる領域に特化してさらに深く取り組む」「やる気が薄れたときも、自分で気持ちをコントロールする」だった。「何を始めたらいいか定まらない」とはよく聞かれる悩みだが、すでに学んだことや経験したことは、大人の学びにとって豊かな資源になる。迷ったら、すでにある程度の興味や知識がある領域から深めたいものを絞り込んで取り組むのは、一つの有効な方法だと思われる。
「生活/文化系」に比べて、「語学/仕事系」の学びを継続する方法として特に高かったのは、「自分の状況・状態がわかるようなフィードバックが得られる」「発表したり使ったりなどアウトプットの機会がある」だった。「語学/仕事系」に比べて、「生活/文化系」の学びを継続する方法として特に高かったのは、「自分にあったやり方・ペースで取り組める」「情報交換したり一緒に取り組んだりする仲間がいる」だった。「プランニング」「コントロール」「モニタリング」「リレーションシップ」の各項目は循環的、複合的に行われるもので、いずれも自律的な学びを支えるものだといえるが、学びの領域やおかれた状況に応じて、取り組みやすく必要性の高いものから条件を整えることで、好サイクルを生み出せる可能性があると思われる。
「自ら興味をもったことを、継続的に学んだり取り組んだりするために、あなたが大事だと考えるコツや工夫(持論)」を、自由記述で回答してもらったところ、「学ぶことによって何を得られるのか明確にする」や「興味を持ったことを話せる相手、一緒に行ける仲間をつくる」など、前述の「プランニング」「コントロール」「モニタリング」「リレーションシップ」に該当する具体的な工夫が記述に見られた。
注
[1]: 「1年以上にわたり継続的に、自ら興味をもって取り組み、上達したり詳しくなったりしていると感じていること(学習対象、趣味、活動など)」があると答えた人の、最も熱心に取り組んでいることの具体的な内容とそれを継続している理由を調査。
[2]: 語学、ビジネス知識・スキル、IT・情報処理を含む。
[3]: 金融・投資、生活、文化芸術、スポーツ・健康を含む。