全社対象のサーベイやデータ活用基盤の構築を推進中
人財戦略における大きな変化に組織を挙げて対応していくために、日立グループでは新たな人財マネジメントの取り組みを推進している。そうした中で日立ソリューションズでは、2020年から2021年7月現在まで、すでに計5回の「労働環境実態サーベイ」と呼ばれるアンケート調査を実施してきた。これは「新常態での新しい働き方の確立に向け、現状の課題を把握する」ことを目的に、日立ソリューションズの全社員を対象に行われているもので、役員および出向受け入れ者までを含む、まさに会社ぐるみの調査だ。
「これまでも日立グループでは、グループ30万人を対象に年1回サーベイを実施してきました。そうした下地があったところに、2020年度から日立ソリューションズでは全社員が原則在宅勤務になりました。そこで、今後も続いていくテレワークにおける働き方の課題や社員の不安などを抽出し、先手の対策を打っていく目的で、独自にサーベイを始めたのです」(伊藤氏)
5回のサーベイを実施した結果を見ると、回を追ってテレワークを受け入れる社員が増えてきた一方で、定着するにつれ、他者とのコミュニケーションを希望する声が増えてきた。これに対して人事部門では、タテ(上位上長)・ヨコ(部門横断)・テーマ別のコミュニケーションの機会をつくり、オンラインでの雑談・相談をしやすい機会と雰囲気の醸成を行った。また、バーチャル組織でのウォーキングなど共通ゴールをもった活動を推奨する施策を行った。
もう一つの取り組みとして、伊藤氏は「EX(Employee Experience:従業員体験)向上のためのHRデータ活用」を挙げる。EXは最近HRの領域で話題のキーワードの一つになりつつあるが、「従業員体験=従業員が企業で働く中で得る、あらゆる経験や価値」を指している。
「EXをより良くすることで従業員の満足度が向上すれば、仕事の効率や質が向上し、顧客体験が向上して継続的な利用や発注拡大につながります。その結果、従業員に顧客からの感謝や評価が寄せられ、EXがさらに向上する。このサイクルを回しながら、最終的に事業の成長・拡大につなげていきます」(伊藤氏)
日立ソリューションズではその実践として、現在さまざまな業務プロセスから抽出されるデータをまとめて見える化し、活用する試みに取り組んでいる。これによって「採用・配置→人財の活用→評価や処遇→育成」のサイクルを確立していくのがねらいだ。
「このサイクルをつなぐデータを共有することで、プロセス全体を俯瞰しながら人財戦略を立てていけるようになるのが目標です。現在は、その基盤となるデータベース構築とデータ蓄積に全力で取り組んでいます」(伊藤氏)