伊藤 直子(いとう なおこ)氏
株式会社日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部 主幹技師長 兼 人事総務本部 本部員
働き方改革エバンジェリスト
大学卒業後、1992年、株式会社日立中部ソフトウェア(現 株式会社日立ソリューションズ)に入社。ソフトウェア製品開発、ネットワーク・セキュリティSEを経て、2004年管理職へ。2015年から働き方改革のプロジェクトに入り、自社の改革推進とともに、自社での取り組みを生かして企業の働き方改革をITで支援する事業に携わっている。
経営戦略と人財戦略を両輪に企業価値の向上を図る
冒頭、伊藤氏はニューノーマルにおける人財戦略をどのように考えるかについて、経済産業省のレポートをもとに説明した。これによれば、近年起きている大きな変化には「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」などがあり、さらに昨年からはコロナ対応(ニューノーマル)という要素が加わったという。
こうした大きな変化の中で、人的資本の価値を最大限に引き出せるかどうか。そのために必要な変化を自ら起こせる企業とそうでない企業の間には、埋めがたいほどの企業力の格差が生じるとレポートは指摘している。
「こうした変化で何が変わるかというと、経営戦略としては、変化への対応力の必要性が加速していきます。一方、人財戦略としては、『人的資本は企業価値の源泉である』という考え方に基づき、経営戦略と緊密な関連を保ちながら、組織や個人の行動の変化を企業文化として定着させる努力が求められてきます。この両輪を最適なバランスで回すことにより、中長期的な企業価値の向上を図っていかなくてはなりません」(伊藤氏)
さらに伊藤氏は、人財戦略の何がどのように変化するかについて、次の6つのキーワードを挙げて説明した。
①人財マネジメントの目的 | これまでは従業員や人財を「人的資源」と捉え、その資源を確保・消費していく「コスト」と考えていた。今後は人財を「人的資本」と考え、そこに積極的に投資して成長させ、企業の成長につなげていくようになる。 |
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②アクション | 人事を担う、いわゆるHR部門の人々の行動も大きく変わる。従来は人事制度や仕組みの運用・改善が主な業務だったが、これからは「企業価値の向上」を目的として、その実現に向けた制度やルール、教育の提供などを考えていかなくてはならない。 |
③イニシアチブ | これまでの日本企業では、経営戦略の立案と人事部門の業務は、まったく別々のものと考えられていた。だが、これからは経営戦略と人事は成長の両輪として紐づけられるため、経営層が主体的に人財戦略にも関わっていくことになる。 |
④ベクトル・方向性 | 人財をどのような形で活かしていくのか、社外も含めたさまざまな立場の人々と積極的に対話していくことが求められる。 |
⑤個と組織の関係性 | これまで会社と社員は「雇い・雇われる」相互依存の関係にあり、お互いの安定を確保してきた。今後は、社員が自律的に働き、会社は社員個々の力を活かしていくという関係に変わっていく。 |
⑥雇用コミュニティ | 社内に人財を囲い込む雇用形態から、副業なども含めた多彩な雇用スタイルの下で、企業と人財が「選び・選ばれる」関係に変化していく。 |
「こうした変化の下で新しい人財マネジメントの仕組みを作るには、組織側と従業員側のさまざまな情報を“見える化”し、そのマッチングによって適所適材の配置を実現することが必要です。そうした地道な取り組みによってこそ、個を認め、活かす組織文化が醸成されると、日立ソリューションズでは考えています」(伊藤氏)