1. 事件の概要
本件は、原告(以下「X」)が、被告(以下「Y社」)との間の雇用契約に基づき、時間外労働に対する割増賃金の支払い等を求める事案です。今回は様々な争点の中から、「仮眠時間」および「休憩時間」に関する内容を取り上げて解説します。
(1)当事者
Xは、Y社との間で雇用契約を締結し、それ以降、Y社において警備業務等に従事している者です。
Y社は、警備業を主な業務内容とする株式会社です。
(2)雇用契約の締結
XとY社とは、平成23年9月20日、契約期間を同日から約6ヵ月とする有期雇用契約を締結しました。
平成24年2月20日にこれを更新し、同年11月からは、これを期限の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」)に変更しました。
(3)本件雇用契約の内容
就業場所 | D1警備隊(会社の事情により変更する場合がある) |
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業務内容 | 警備業務に関する業務全般(会社の都合で変更する場合がある) |
就業時間 | 1ヵ月単位の変形労働時間制。Y社の作成する勤務表による。 |
休憩時間 | Y社の作成する勤務表による。 |
休日 | 月9日。休日の日程はY社の作成する勤務表による。 |
賃金 |
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賃金の支払方法 | 月末締め翌月25日払い |
(4)XのY社における配属
平成23年9月から平成24年6月まで | D2ビルの警備を担当するD2警備隊 |
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平成24年7月から同年12月まで | D3店の警備を担当するD3警備隊 |
平成25年1月から同年8月まで | D4店の警備を担当するD4警備隊 |
平成25年9月から平成26年5月まで | F社G1店の警備を担当するG1警備隊 |
平成26年6月から平成27年5月まで | D5店の警備を担当するD5警備隊 |
(5)割増賃金に関連する勤務割 ~D4店およびD5店
本件の割増賃金の請求に関連するものは、D4店およびD5店の警備について定められていた次の内容でした。
①D4店
午前8時30分から翌日午前8時30分までの24時間勤務。そのうち、午前0時から午前4時30分までの4時間30分を仮眠時間(以下「本件仮眠時間1」)とし、午後10時から午後10時30分までの30分を休憩時間(以下「本件休憩時間1」)としていました。
②D5店
- A1勤務およびA2勤務(以下、併せて「A勤務」という)
- いずれも午前9時30分から翌日午前9時30分までの24時間勤務。そのうち、A1勤務は、午前1時から午前5時までの4時間を仮眠時間とし、A2勤務は、午前2時から午前6時までの4時間を仮眠時間(以下、これらの仮眠時間を「本件仮眠時間2」)としていました。これを、本件仮眠時間1と併せて「本件各仮眠時間」とします。
- B勤務
- 午前7時から午後4時までの9時間勤務。
- C勤務
- 午後6時から翌日午前6時までの12時間勤務。そのうち、午前1時から午前2時までの1時間を休憩時間(以下「本件休憩時間2」)としていました。これを、本件休憩時間1と併せて「本件各休憩時間」とします。
- 変則勤務
- 上記勤務の他に、4時間の仮眠を伴う変則勤務がありました。