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人事部門のための今さら聞けないDX | 第1回

人事部門が理解すべきデジタル時代の潮流 日本的経営の寿命はすでに尽きている

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 多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが活発化していますが、それはなぜ注目されているのでしょうか。また、企業の人事部門とはどのような関わりがあるのでしょうか。デジタル時代の到来が、社会・経済・ビジネス・組織・人事に及ぼす影響について考えます。

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デジタル時代の到来が何を意味するのか

 ちまたでは「デジタル化社会」や「デジタル時代の到来」といった言説が飛び交っていますが、それはいったい何を意味しているのでしょうか。それはすでに始まっているのですが、私たちの身の回りで見られる現象を例にとって3つの重要な流れに注目してみましょう(図1)。

図1 社会のデジタル化を進展させる3つの潮流
図1 社会のデジタル化を進展させる3つの潮流
[画像クリックで拡大表示]

 1つ目は、「あらゆるデータがデジタル化されて捕捉できるようになる」ということです。私たちは今や、普段の生活の中でさまざまなデータを生み出しています。駅の改札を通る、コンビニでスマホ決済するといった行動のたびにデータが生み出され、どこかに保存されています。今後、生活者の衣・食・住、交友関係、健康状態、購買・移動などの行動にかかわる情報にとどまらず、気候、交通、災害などの社会環境にかかわる情報、企業における事業や業務にかかわる営みなど、あらゆる情報をデジタルデータとして捕捉できるようになります。

 データは、捕捉されてどこかに保存されるだけはありません。これらのデータは、分析や予測に活用されることで、利用者がより便利になったり、新しいサービスやビジネスが生まれたりして、現実の社会にフィードバックされることが重要なポイントです。

 2つ目は、「インターネットなどのネットワークによって人やモノがつながりを持つ」ということです。人と人がつながるという体験も、SNSの普及で広がってきました。また、コロナ禍の影響により、オンラインでつながるということも当たり前になりました。

 あらゆる行動や事象がネットでつながると、それによって新しい価値が生み出されます。それは、人と人のコミュニケーションかもしれませんし、商取引かもしれません。さらに、IoT(モノのインターネット)によって、センサーを搭載したエアコンや自動車がネットに接続されるようになると、つながりの対象は一気に広がります。機器の故障を事前に予兆できるかもしれませんし、河川の増水やビルへの不審者の侵入を知らせることで防災や防犯に役立つかもしれません。

 そして3つ目は、「物理的な世界の他に仮想的な世界が存在し、それらを行き来できる」ことです。いうまでもなく、私たちは物理的な世界に生きています。しかし、デジタルデータがネットワークを通じて行き交うことで、仮想的な体験や価値という新しい概念が生み出されました。これまでは物理的な経験がある人しか、その体験を伝えることができませんでした。経済的な価値もお金という物理的なモノで交換されるのが当たり前でした。

 これを、デジタルデータとネットワークが作り出す仮想の空間が変えようとしています。すでに仮想の空間で会議をしたり、教育を受けたりすることができるようになっていますし、仮想の通貨を支払うこともできます。物理的な世界に加えて、もう1つの仮想の世界で仕事や遊びが体験できるようになってきています。さらに、仮想空間の中の美術館や博物館に行ったり、遠隔地から医師の診療を受けたり、あらゆる場面に広がっています。CG(コンピュータグラフィック)が創り出した映像の中を旅行したり、AI(人工知能)面接官の採用面接やAI教師の授業を受けたりすることも、もはや夢ではなくなっているのです。

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この記事の著者

内山 悟志(ウチヤマ サトシ)

株式会社アイ・ティ・アール 会長/エグゼクティブ・アナリスト。大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパン(現ガートナー ジャパン)でIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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