就活生は自分に合うツールを各自で活用
従来の就活には、「大手就職サイトを見て広く業界や企業を知り、大型・小型の対面イベントに参加してピンポイントに企業を知る」という、ある程度固まったスタイルがありました。しかし、近年は様相が変わっています。
弊社は2022年1月、22卒を対象としてアンケートを実施し、学生が就活で利用しているツールと、企業が採用活動で利用しているツールの利用割合(複数回答)を得ました。その結果、学生と企業で利用しているツールに乖離があるほか[1]、学生が複数のツールを利用して就活を進めていることが分かりました(図1)。
就活で使うツールの多様化が進んだ背景には、大きく2つあると考えています。1つ目は、新型コロナ感染拡大防止のために就活のオンライン化が進んだことです。オンライン化により、これまで「対面だからこそ収集できていたリアルな情報」、具体的には「社風」「働くイメージ」などを得ることが困難になりました。そこで、学生は複数のツールを、それぞれの特徴を活かしつつ自分に合った方法で利用するようになりました。
2つ目は、Z世代のネットリテラシーの高さです。23卒の就活生はZ世代に当たるとともに、「スマホ世代」でもあります。幼い頃からインターネットやSNSに親しんでおり、日常的に知りたい情報を複数のツールを巧みに使い分けながら取得しています。就活においても同様に、用途によって複数使い分けています。
従来どおりの固まったスタイルを使えなくなったいま、就活生が欲する情報を提供していくには、企業は彼ら・彼女らのツールの使い分けを理解することが必須といえるでしょう。
注
[1]: オープンチャットと掲示板は学生のみが利用するツールです。
複数ツールを使い分ける就活生、その実態は?
では、就活生はどのようなツールをどのような目的で使っているのでしょうか。ここからは図2に示すとおり、それを大きく4つに分けてお話しします。
「就職サイト」では、広く業界や企業の情報を集めています。特に、就活生がすでに知っている大手企業の情報収集に利用されることが多いです。また、大手就職サイトに企業情報が掲載されている場合、そのこと自体が企業への信頼につながるケースもあります。
「イベント」は、コロナ前までは就活生が知らない企業と対面で「偶然の出会い」を創出する場となっていました。就職サイトではたどり着かないような企業と出会い、就活生は選択肢の幅を広げたり、その場で企業や周りの就活生と直接会話したり、企業に対して個人的な質問をしたりといったことができていました。しかし、コロナ禍で対面のイベントが開催できなくなりオンライン化されたことで、イベントの役割は就活生の中で変わりつつあります。
オンラインイベントは、対面のイベントとは反対に、周りの就活生の目を気にせずリラックスして参加できます。直接聞きづらいような質問を匿名でできるというメリットもあります。さらに、移動距離や移動時間の関係で難しかったであろうイベントにも参加でき、効率的に情報収集することが可能です。
「ダイレクトリクルーティング」では、場所を問わずネット上で、企業と就活生との直接的な接触が図られます。就活のオンライン化で、企業との個人的なやり取りが困難になった中、就活生と企業をつなぐオンライン就活の救世主として、コロナ禍で市場が拡大したツールの一つです。就活生はスカウトメールなどを通じて、知りたくても就職サイトには載っていない情報を企業から聞き出すことも可能です。
「SNS」は、よりリアルで生々しい情報の収集に利用されています。例えば、Twitter上に「○○年卒就活アカウント」といったアカウントをつくり、就活生同士で情報を交換したり、応援ツイートを投稿し合ったりしています。また、企業の看板を背負ってアカウント運用している社員の日々のツイートから、「お客様への接し方」や「リアルな退勤時間」なども見ています。そういった点では、就活生はコロナ前よりもリアルな情報を収集できているともいえます。
上記以外にも、実際に働く社員や退職者が感じる企業の課題や現場の雰囲気などを知ることができる「口コミサイト」や、今すぐ知りたい情報をリアルタイムで交換できる「LINEのオープンチャット」、信頼できる知人の紹介で就活を進める「リファラル」といったツール・手段があり、就活生は状況に応じて巧みに使い分けています。