導入・活用のポイント①
個人選択型HRMは、個を尊重する明確なポリシーのもとでこそ機能する
仕事、働き方、キャリアに関する従業員による主体的な選択の機会を増やすような23の施策をリストにし、導入・活用状況と導入検討状況についての回答を示したものが図表2です。
調査対象とした23施策のうち、「2. 自己申告制度(従業員が人事担当部署に直接、異動やキャリア形成への希望を伝える制度」や「20. 上司とのキャリア相談(1on1ミーティングでの会話などを含む)」などは、導入率が高いものの、対象者による施策の活用が不十分だと考えられています。個人の希望を聞く場面を増やすだけでは、個人選択型HRMが機能していかないことが示唆されます。
その改善策とするためか、「6. 複線型人事制度」や「23. メンターやカウンセラーとのキャリア相談」などの今後の導入意向が高く、社内キャリアに選択肢を増やし、個人選択を支援する相談機能を拡充する様子がうかがえました。
人事の制度や施策は、経営戦略に合致した明確な目的意識と、目的に沿った複数の施策間の整合性がそろってこそ機能するものです。個人選択型HRMの場合には、個人の選択や生き方を尊重し、個を生かそうとするマネジメント側の本気が問われます。
調査結果においても、企業が従業員にキャリア自律を求める度合いが強いほど(図表3)、図表2で提示した個人選択型HRMの諸施策が多く導入されていました。「導入しており、制度対象者に一定以上活用されている」施策の数に限定して平均値を算出した場合も、同様の傾向がみられました。