創業以来のタケダイズムを行動指針「PTRB」に落とし込んだワケ
――御社では「すべての患者さん:Patient、ともに働く仲間:People、いのちを育む地球:Planetのために」という約束を掲げていらっしゃいますが、その下支えとしてなぜデータとデジタルの力が必要なのでしょうか。
済木俊行氏(以下、済木) 我々の最終的な目標は、「患者さんのところへ、より革新的な医薬品を、より早く届けること」であり、この目標を達成するためにはデータとデジタルの力が不可欠だと確信しているからです。
――なるほど。デジタル人材育成の話に入る前に、タケダイズムの行動指針について教えてください。1781年の創業以来、「公正・正直・不屈の精神に支えられた“誠実”」という価値観をタケダイズムとして大切にされてきたそうですが、それを日々の行動指針として「患者さんに寄り添い(Patient)、人々と信頼関係を築き(Trust)、社会的評価を向上させ(Reputation)、事業を発展させる(Business)」に落とし込んだと伺いました。こちらの理由を教えていただけますか。
済木 タケダイズムである「誠実:公正・正直・不屈」を、様々な文化的背景を持つグローバル従業員にも理解しやすく、日々の行動指針へ落とし込んだものがPatient、Trust、Reputation、Businessの頭文字を取って組み合わせた「PTRB」です。実務として患者さんに価値を提供していく上で、誠実という言葉だけよりも、PTRBのほうが自分事として具体的なアクションにつなげやすいのです。
私たちのすべての判断基準はPTRBになっています。例えば、何か新しい取り組みを始めるか否かを判断しなければならないときに、まずは「P:それは本当に患者さんのためになることなのか?」が問われます。Pをクリアできたなら、次は「T:それは人々と信頼関係を築くことにつながるのか?」を考える。PTRBの順番で判断していきます。もちろん、価値観やイズムが変わることはありません。
PTRBを行動指針に据えることで、タケダイズムをしっかりと体現しながら、具体的な行動として表現していくことができるようになりました。また、日々の行動指針であるPTRBができたことで、「自分の仕事が患者さんのためにつながっているんだ」と社員がより誇りを持てるようになったと思います。
図師康剛氏(以下、図師) 我々TBS(タケダビジネスソリューションズ)[1]はバックオフィス業務を担っているので、どうしても「患者さんのためにやっている仕事だ」と実感しにくい側面があります。しかし、PTRBを起点にすることで、これまでのように他部門から依頼されたことをただ請け負うというマインドで仕事をするのではなく、「より患者さんのために役立つには、どうすべきか」をプロアクティブに考えて、行動につなげられるようになったと感じています。
済木 みんなから納得を得られたから、これだけ早く全社に浸透したのでしょうね。
注
[1]: タケダ社内のグローバルファイナンス部門に属し、ファイナンス・購買・人事のエンド・ツー・エンドプロセスの最適化を推進している部署。社内横断的な自動化の迅速な普及などで効率化を進め、従業員がより理想的な働き方を実現するために、データ&デジタルの活用を積極的に進めている。