リクルートマネジメントソリューションズ(リクルートMS)は、「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2022年」を実施し、その結果を発表した。
調査の概要は以下のとおり。
調査の結果については、同社は以下のように述べている。
組織課題について「新価値創造・イノベーションが起こせていない」が人事1位、管理職3位(図表1)
人事担当者に会社の組織課題について尋ねたところ、選択数が多い順に1位「1.新価値創造・イノベーションが起こせていない」(66.7%)、2位「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」(66.0%)、3位「3.難しい仕事に挑戦する人が減っている」(64.0%)という結果だった。
同じ設問に対する管理職層の回答は1位「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」(64.7%)、2位「4.ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」(62.0%)、3位「1.新価値創造・イノベーションが起こせていない」(60.0%)だった。
「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」については、同調査をスタートした2020年から毎年選択率上位の課題である。一方、「1.新価値・イノベーションが起こせていない」は、今回の調査で人事・管理職層とも順位が上がった。人事が選択した課題の3位で「3.難しい仕事に挑戦する人が減っている」が上がってきたことからも、新しい仕事や価値を生み出すことへのニーズが高まる一方、その対応が想定通りに進んでおらず、企業の課題として挙げられている可能性が考えられる。
ここ数年、仕事だけでなく、学習や購買、エンターテインメントや日常のコミュニケーションなど様々な活動のオンライン化が急速に進んだ。また、そのことは単なるオンライン化を促進するだけでなく、私たちの日常行動や価値観にも大きな影響を与えている。そうした先の読めない急速な変化が起こり得る社会の中で、今までの延長線上にはない新価値の創造に取り組む人材の獲得・育成が、企業にとって重要課題になっていることは想像に難くない。また、そのような期待が高まる中、ミドルマネジメント層への期待は高くなっているのではないだろうか。「4.ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」について人事の選択率は4位だったが、管理職層は2位となった。
「管理職に期待していること」「管理職の役割」の1位は人事・管理職ともに「メンバーの育成」(図表2)
人事担当者に「管理職に期待していること」(3つまで選択)を尋ねたところ、最も多かった項目は、「1.メンバーの育成」(42.7%)だった。次いで、「2.業務改善」(26.7%)、「3.担当部署のコンプライアンス・勤怠管理の徹底」(23.3%)だった。
管理職層に「管理職として重要な役割」(3つまで選択)を尋ねたところ、人事と同様に「1.メンバーの育成」(46.0%)が1位だったが、続いては「5.担当部署の目標達成/業務完遂」(32.0%)と「2.業務改善」(30.7%)が選ばれた。
選択順位が高い項目の中でも、メンバーの育成や目標達成、業務改善は管理職層の基本ミッションであるため上位に来ることは当然とも考えられる。一方、リモートワークが進む中でメンバーの勤怠管理や、機密情報の管理などコンプライアンス観点での期待が人事から高まっている。
管理職層が日々の業務で困っていること1位は「業務改善」(図表3)
管理職層に、日々の管理職業務で「困っていること」(いくつでも選択可)を尋ねたところ、上位から「1.業務改善」(48.0%)、「2.メンバーの育成」(44.0%)、「3.目標達成のための業務推進」(35.3%)が選ばれた。図表2で管理職層が考える重要な役割としては「メンバーの育成」が1位だったが、困っていることとしては「業務改善」の選択率が高い結果となった。
「業務改善」についてはコーチングによる個別サポートが求められている(図表4)
「管理職の役割」として1位に挙がっていた「メンバーの育成」については、「A.研修などでのインプット」(28.8%)や「B.上司や人事からの具体的なアドバイス」(25.8%)の選択率が高く、これらのサポートは「すでに実施しているサポート」としての選択率も高くなっている。
一方、「管理職層が困っていること」の選択率で1位として挙がった「業務改善」について、「G.外部の専門家によるコーチング」を求めるという選択が31.9%と、最も多い結果となった。「業務改善」については難度が上がっており、コーチングなどによる個別での対応を求める声が強まっているのではないか。
「自律共創型」組織への取組み(図表5)
図表5の、Aの選択肢で表される組織は、方針や仕事の進め方は固定的で、決定した目標を効率的に実行していくことが業績達成へとつながり、以前から多かった「実行型」のマネジメントが有効である。一方Bの選択肢で表されるような組織は、先が読みづらく変化のスピードが速い環境下にあり、その変化に合わせて個人や組織が学習しながら自律して判断をしていく「自律共創型」のマネジメントが有効だ。
「自律競争型のマネジメントが適する組織」の傾向が「外部環境の複雑性」や「上位方針の曖昧性」において高まる(図表6)
管理職が担当している組織について「A.実行型のマネジメントが適する組織」と「B.自律共創型のマネジメントが適する組織」のどちらの傾向が強いか質問した結果について、昨年と比較すると「1.外部環境の複雑性」と「3.上位方針の曖昧性」の項目について、「Bに近い/どちらかといえばBに近い」という回答の選択率が高くなっている。
Bの自律共創型のマネジメントが適する組織の特徴は、「1.自組織を取り巻く環境の変化はめまぐるしく、ほとんど予測が立たない」「3.上位方針や戦略が抽象的で、自組織で取り組むことは自分たちで考えて設定することが求められる」だった。
VUCA環境の中でトップ層が具体的な戦略を描くことが難しくなっている状況がうかがえる。前問までの結果から分かってきた「新価値創造」への期待が高まっていることや、管理職にとって「業務改善」の難度が上がっている背景にはこのような変化がありそうだ。
また、「5.変化対応の複雑性」や「9.自律の必要性」といった項目も、Bの自律共創型のマネジメントが適する組織側の選択率が、昨年よりも高くなっている。管理職層は、組織の変化に合わせて、業務の改善や推進、メンバーの育成などの役割に取り組むことが求められる。
「自分の所属組織は、自律共創型組織であることが必要だと思う」が半数を超える(図表7)
管理職に「自律共創型組織」について尋ねたところ、「2.自分の所属組織は自律共創型組織であることが必要だと思う」という設問に対して、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人が全体の65.7%だった。「3.実際に自律共創型の組織運営に取り組んでいる」という設問に対して、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人は47.4%だった。
自律共創型の組織運営に向けて取り組んでいること1位は「組織のビジョンを自分の言葉でメンバーに語る」(図表8)
自律共創型の組織運営に向けた取り組みの中で「行っている」の回答率が最も高いのは、「2.組織のビジョンを自分の言葉でメンバーに語る」(22.4%)、次いで「6.メンバー同士の自発的な情報共有や相互のサポートを促す」(20.9%)だった。
自律共創型組織に向けた組織運営の難しさ1位は、「あいまいな状況の中でも先を見て、組織のビジョンを打ち出す」(図表9)
「難しいと感じていること」について選択率が高かったのは、「1.あいまいな状況の中でも先を見て、組織のビジョンを打ち出す」「6.メンバー同士の自発的な情報共有や相互のサポートを促す」だった。ビジョンの打ち出しやメンバー同士の相互サポートの促進は重要性が高く、取り組んでいる組織が多い一方、なかなか難しいと感じられている現状がうかがえる。
【関連記事】
・新任管理職のマネジメント力を強化する研修プログラム「ラーニングトレック マネジメント基礎」を提供開始―リクルートMS
・「マネジメントコンピテンシー診断」を7月より販売開始、管理職のマネジメント能力・行動の自己評価を支援―アジャイルHR
・管理職の4割以上が、コロナ禍での部下マネジメントにおいて「自身の負担が増加」―Adecco Group Japan調べ