帝国データバンクは、人手不足に対する企業の動向調査を実施し、その結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査期間:2022年10月18日~10月31日
- 調査対象:全国2万6752社
- 有効回答企業数:1万1632社
【正社員】人手不足割合は51.1% コロナ禍以降で最高、2019年同月時点を上回る水準に
10月時点における従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員について「不足」と感じている企業は51.1%だった。前年同月から7.3ポイント上昇、2年前と比較すると17.1ポイントの大幅上昇となった。すでにコロナ禍前の2019年10月(50.1%)の水準を上回っており、10月としては2番目の水準となった。また、人手を「適正」と感じている企業は40.2%、一方で「過剰」は8.7%となった。
IT人材の不足が目立つ「情報サービス」が69.1%でトップ、受注機会の損失も
業種別では、「情報サービス」が69.1%で最も高く、7割に迫る水準まで上昇している。昨今の旺盛なDX需要を受け、景況感も他業種と比較して活況であるものの、慢性的なIT人材不足がより顕著になっている。実際に「受注機会が多いが人手不足で対応できない」(ソフト受託開発、東京都)との声が相次ぐ。次いで「旅館・ホテル」(65.4%)、「飲食店」(64.9%)といったBtoC業種が続き、前年同月からの上昇幅も大きい。「建設」(64.5%)や「運輸・倉庫」(63.8%)など8業種が6割超となり、それぞれ前年同月より上昇している。
【非正社員】31.0%が人手不足、10月としては3番目の高さ
非正社員について「不足」と感じている企業は31.0%となった。正社員の傾向と同様に前年同月から大幅に上昇し(5.9ポイント増)、2017・2018年に次いで10月としては3番目の高水準となった。また、非正社員の人手が「適正」とした割合は61.6%、「過剰」は7.4%だった。
「飲食店」と「旅館・ホテル」が7割超、群を抜いた高水準に
非正社員の人手不足割合を業種別に見ると、「飲食店」が76.3%となり最も高くなった。僅差で「旅館・ホテル」が75.0%で続き、特に前年同月からの上昇幅は39.1ポイントと大幅な上昇を記録した。旅館・ホテル業界からは、「訪日外国人の個人旅行が解禁されたことなどによってホテル需要は回復してきているが、人手不足で受け入れ態勢が不十分であり、機会損失が発生している」(旅館、東京都)との声が上がっている。
続いて、「人材派遣・紹介」で57.5%と高く、「深刻な人手不足で派遣の支払単価が上がる中で、受注単価の上昇が追い付かず派遣業界は厳しい状況」(労働者派遣、群馬県)といった声が上がっている。他にも「娯楽サービス」(55.3%)や総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(51.2%)など3業種が5割台となった。
人手不足が特に深刻な「旅館・ホテル」と「飲食店」、時間外労働の増加も際立つ
人手不足を感じる企業の割合は“コロナ禍以降で過去最高”という局面が続く中で、正社員・非正社員それぞれ不足感が顕著となっているのが「旅館・ホテル」および「飲食店」である。
「旅館・ホテル」は、2回目の緊急事態宣言が発出された2021年1月には5.3%まで低下。そこから再び増加し続け、2022年後半は正社員・非正社員それぞれ6割以上で推移している。
「飲食店」は、特に非正社員で人手不足が目立ち、2020年以前から7割を上回る水準で推移していた。コロナ禍直後は大きく減少したものの、「ウィズコロナ」の定着が進んできた2021年の後半から従来の水準へと戻った。正社員でも10月時点で64.9%と高水準になっている。
また、前年同月と比較した時間外労働の増減について尋ねたところ、「増加」とした企業は「旅館・ホテル」が66.7%と最も高かった。10月より46道府県で開始した全国旅行支援や水際対策緩和によって需要が高まる中で、時間外労働が急増している。次いで「飲食店」でも40.6%と高く、人手不足が顕著な2業種で時間外労働の増加も目立った。
両業種とも人手不足の解消に向け、採用活動をしてもなかなか人材が集まらないとの声が多い中で、「まずは社内SNSを活用したコミュニケーションの効率化など、できるところからシステムの改善を重ねたい」(旅館、東京都)や「これから冬場なので、閑散期の農業従事者を一時的でも雇い入れたい」(旅館、長野県)、「POSレジを導入して顧客情報を分析しやすくした。その人員を他に充てて多能工化していきたい」(西洋料理店、佐賀県)など、様々な施策が挙げられた。
なお、同調査の詳細データは、帝国データバンクのWebサイトで確認できる。
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