日本能率協会(JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施し、その結果を発表した。
同協会は、1979年より同調査を実施。今回は最終となる第5弾として、企業各社が考える自社の「現在」「3年後」「5年後」の経営課題、昨年・一昨年からの課題の変化について調査している。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査時期:2022年7月22日~8月19日
- 調査対象:JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5000社)
- 調査方法:郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
- 回答数・回収率:689社・13.8%
現在の課題は「収益性向上」「人材の強化」「売り上げ・シェア拡大」が3年連続でトップ3
「現在」における経営課題のトップ3は、1位「収益性向上」(43.4%)、2位「人材の強化」(41.1%)、3位「売り上げ・シェア拡大」(35.1%)となった。過去3年間の推移を見ると、トップ3の項目は昨年、一昨年と変化はなかった。ただし、1位の「収益性向上」(+2.6ポイント)、第2位の「人材の強化」(+3.4ポイント)は昨年よりも比率が上昇した。
また、「株主価値向上」が昨年と比べ4.2ポイント増加し、3年連続で増加している。これは、企業の社会的責任が問われるようになり、株主をはじめとしたすべてのステークホルダーに対して高い意識が求められている中で、経営層の中にも意識が浸透してきていることの表れであると考えられる。
3年後の課題は「人材の強化」が3年連続で最多、昨年比で課題感に高まり
「3年後」の課題については、1位が「人材の強化」(41.7%)、2位が「収益性向上」(29.0%)、3位が「新製品・新サービス・新事業の開発」「売り上げ・シェア拡大」(ともに25.8%)となった。
過去3年間の推移を見ると、1位の「人材の強化」は昨年と比較して比率が4.8ポイント増加しており、比較的直近において重視度が高い課題と捉えられていることが分かる。他に、「売り上げ・シェア拡大」(+3.9ポイント)、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」(+4.8ポイント)、「株主価値向上」(+4.9ポイント)も昨年より比率が増加した。
反対に、「デジタル技術の活用・戦略的投資」は、昨年比マイナス6.1ポイントと大きく減少。コロナ禍による需要の高まりが落ち着いたことが考えられるほか、取り組みがある程度進行しており、「3年後」の課題ではなくなってきていることが考えられる。
5年後の課題は3年連続で「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」が1位
「5年後」の課題は、1位「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(14.2%)、2位「人材の強化」(10.7%)、3位「売り上げ・シェア拡大」(10.2%)となった。
昨年からの変化としては、「CSR、CSV、事業を通じた社会課題の解決」が3.7ポイント減少し、「売り上げ・シェア拡大」(+3.6ポイント)、「株主価値向上」(+4.6ポイント)が増加している。「CSR、CSV、事業を通じた社会課題の解決」は昨年比で見ると落ち着きはみられるものの、引き続き4位と上位であり、企業が重視している項目であることに変わりはない。
なお、同調査における第1弾からの結果をまとめた報告書は、日本能率協会のWebサイトで確認できる。
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