パーソルキャリアは、「転職市場予測2023上半期」を公開した。同社は、予測について以下のように述べている。
2023年上半期の転職市場は、新型コロナから回復した企業の業績好調を背景に、求人が増えて“追い風”が続く見込み
2023年上半期の転職市場全体における求人は、全14分野で「増加」と予測しており、市場全体で活発化する見込み。求人増加の背景には、企業の事業成長があると考えられる。2020年を底に企業の業績が回復し、現在では業績好調の企業も増えている。結果、コロナ禍で採用活動を中断していた企業が採用を再開し始め、求人数はコロナ前の水準まで増加し、転職市場全体で売り手市場になっている。そのため、2023年上半期は、若手・ベテランともに転職のチャンスがあるといえる。
若手人材の採用ニーズが高まっている要因には、少子高齢化などを背景に、将来を担う人材を育成しようという側面に加え、自社の若手にとって転職が身近なものになっていることへの対応も含め、外部からの採用を強化しようとする動きがある。また、新卒採用の市場競争が激化していることから、第二新卒で若手人材を採用しようとする企業が増加傾向にある。これらの企業では、未経験での転職が見込める職種もあり、チャンスが広がっている。
加えて、IT・通信業界では引き続きDXニーズが拡大。建築・土木業界では2024年3月の働き方改革の猶予終了(2024年4月から時間外労働の上限規制適用開始)、製造業では世代交代を踏まえた技術継承、メディカル(医療業界)では品質管理の強化など、各業界で様々な人材にまつわる課題を抱えていることを受け、採用は活発化する見込み。
14分野の予測
IT・通信(ITエンジニア)
DXに対するニーズ、Web3.0への注目の高まりに加え、基幹システム「SAP ERP 6.0(ECC 6.0)」が標準保守期限を迎える「2027年の崖(2027年問題)」への対処を背景に、アプリ系エンジニア、インフラ系エンジニアともに採用ニーズが高く、求人数は増加する見込み。経験豊富なベテランエンジニアだけでなく、ポテンシャルを期待した未経験エンジニアの採用熱が高まっている。特に、クライアントワークを行う受託開発・SES企業では採用ニーズが高く、未経験での採用が増加すると予想している。
リモートワークの普及や、外部ベンダーに依存していたIT環境からの脱却、新サービス開発などを背景に、ITインフラ系エンジニア、ITセキュリティ系エンジニアの採用ニーズは今後も高まり続ける見込み。
電気・機械(製造エンジニア)
自動車や製造装置メーカーでは需要が堅調であることに加え、団塊ジュニア層の引退を見据えた技術継承のために、電気・機械領域のエンジニアへの採用ニーズは高まり、求人数が増加すると予想。経験者、未経験者ともに採用ニーズが増加することが見込まれる。特に、新しいソフトウェア領域のエンジニアはまだまだ不足しており、これらの領域の採用ニーズが高まるといえる。
建築・土木
長時間労働の是正を目的に、2024年3月で働き方改革の猶予が終了(2024年4月から時間外労働の上限規制適用開始)することから、人員充足に向けた動きが強まり、経験者・未経験者ともに採用ニーズが高まる見込み。リモートワークを希望する個人が増加していることを背景に、設計、CAD、建設コンサルといった職種を中心にリモート環境を整備する企業が増加すると予想している。
金融
ITシステム、事務企画・DX推進、スペシャルファイナンス、セキュリティ、市場運用、M&A、監査、コンプライアンスといった専門領域では、豊富な経験を持った人材の採用が積極的に行われる見込み。銀行、証券、生損保、リースなどの大手金融機関を中心に、組織の活性化を図るため、第二新卒で若手人材を確保する動きが見られると予想する。
メディカル
行政、メーカーともに品質管理の強化に努めていることから、医薬品メーカー、医療機器メーカー、バイオベンチャーでは品質保証の採用が積極的に行われる予定。新型コロナの影響を受け、原材料の仕入れ先に課題を抱える企業では、薬の安定供給を図るSCM(サプライチェーン・マネジメント)に関連する求人が増加することが見込まれる。
医薬品メーカーから、CRO(医薬品開発業務受託機関)やCSO(医薬品販売業務受託機関)への外部委託が進んでいる。結果、これらの企業では、MR、CRA(臨床開発)、研究、分析のポジションでニーズが高まり、経験者・未経験者ともに採用が活発化すると予想している。
営業
業種別では、企業の業績好調を背景にIT、Web、コンサル業界、職種別ではITセールス職を中心に、営業職の採用は活発化する見込み。医療、建設、不動産、銀行、化学、総合商社などでの経験者のニーズが高いことや、資金調達に成功したSaaSベンチャー企業では、年間300人規模の未経験採用を行う企業が出てくるなど、経験問わず採用ニーズが高まると予想する。
人事
新型コロナで採用を一時中断した企業や早期退職者を募って人員を減らしていた企業では、業績回復に伴い、採用を再開。そのため、人事職の求人が増加傾向にあり、特に「採用」ポジションでは、経験者・未経験者ともに採用が進むと予想する。法改正の対応や社員の定着率向上に取り組む企業が増えているため、「労務企画・人事制度」のポジションでは経験者の採用ニーズが高まる見込み。
経理
企業の採用活動の再開を背景に、経営戦略を実現させる重要なポジションである経理職の採用ニーズは高まっている。特に、業績回復を目指す冠婚葬祭・旅行・外食業界では、全国旅行支援の2023年以降の延長といった追い風もあり、求人が増加する見込み。また、リモートワークや副業を希望する個人が増加していることを背景に、企業によるリモートワーク・副業への対応が進められ、出社とリモートを掛け合わせたハイブリッド型の求人が増えると予想している。
法務
法務職の採用ニーズは高く、若手からミドル、ベテランまで幅広く引く手あまたの状態が続いている。特に、年度が替わる3月に向けた採用計画の練り直しに伴って、法務部門の強化に向け採用ニーズはさらに高まる見込み。また、AIによる自動化・業務効率化といったIT活用(DX)の加速や、新規ビジネスの展開を背景に、大手、中小、ベンチャー、スタートアップなど規模を問わず多くの企業が法務部門を強化する動きがあり、中でもIT・Web・広告業界での求人が増えると予想する。
企画・マーケティング
情報過多な時代において、競合優位性を確保するため、最適なマーケティング活動を企画・実施するマーケティング職の採用ニーズは高まっている。こうした背景から、企画・マーケティング職の求人は経験者・未経験者を問わず増加すると予想している。企業によっては、年間100人規模の採用計画があるなど、企画・マーケティング職の需要が拡大するなか、特に、Webマーケティングのスキルに対する需要は高く、経験者は好条件で転職できる可能性が見込まれている。
販売・サービス
コロナ禍からの景気回復に伴い、販売・サービス職の採用ニーズは高まり、全体を通じて求人数は増加する見込み。特に、EC、リユース、中食、ファストフードは在宅ワークの定着によって、今後より成長が期待できることから、採用ニーズが高まると予想する。雇用の流動化に対抗し、人材定着を図るため、個人のキャリアを尊重した取り組みを行う企業が増えており、例えば、勤務地を限定した地域限定職のポジションを新設する企業も出てくる見込み。
事務・アシスタント
事務職では、欠員補充を背景に、組織変更のタイミングである4月に向けて求人が増加する見込み。事務職の採用においては、「IF関数」や「VLOOKUP関数」、データを集計・分析する「ピボットテーブル」などのPCスキルを有する人材を求める傾向が高まると想定している。
クリエイティブ(Web系)
メタバースといった新たなコミュニケーションなど、コロナ禍で加速した企業のコミュニケーション手段のデジタル化(DX)を背景に、エンタメ業界ではエンジニア、クリエイターの求人が増加する見込み。アニメや漫画の人気キャラクターを使ったタイアップやコラボの増加によって、IP(intellectual property/知的財産権)に関するスキルを持つ人材の採用ニーズが高まると予想する。
化学・素材
新型コロナの影響で、2022年中に採用充足しなかった企業を中心に採用ニーズが高まり、2023年も引き続き転職市場は活況になると考えられる。特に今後は、電気自動車の生産増加による電池用部材の需要拡大や半導体関連産業向けの需要の高まりを背景に、既存事業の強化を目的とした採用枠が増え、経験者・未経験者ともに転職の好機になると見込んでいる。
求人増加の背景に、2030年のSDGsの目標達成を念頭に企業運営を行っていることが挙げられる。例えば、「カーボンニュートラル」の実現に向け、二酸化酸素排出量削減に伴う電気自動車の普及に注力している企業では、電気自動車に関連するポジションの採用が活発化すると予想。また、2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が施行され、プラスチックの代替となる製品や機能を開発する企業では、「廃プラスチック削減」に対応するための人材の採用ニーズが高まる見込み。
なお、同予測の詳細データは、同社Webサイトで確認できる。
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