なぜいまスキルが重要なのか
人財管理においてなぜスキルが重視されるようになったのか。その背景には3つの変化がある。
1つ目は、働き方の民主化により、働き手がより多くの自己決定権や柔軟性を持つようになったことだ。以前は、役職や職務が個人の価値や評価に大きな影響を与えていた。しかし現在では、働き手の意識が変化し、最も重要視される要素は「実際の業務内容」へとシフトしている。さらに従来のヒエラルキー型組織から、能力や成果に基づいた評価と昇進の仕組みに移行しつつある。
2つ目に、機械学習(ML)の進歩により、業務に必要な能力を予測できるようになったことが挙げられる。人財が持つスキル、興味のあるキャリアなどをもとに、MLを用いて最適な人財配置を決定することが今後スタンダードになっていくだろう。
そして3つ目は、先行きの見えない不確実性が高い時代(VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))において、優れた能力=スキルを持つ人財がビジネスの担い手としてますます重宝されるようになってきていることがある。
政府もスキルを重視しており、岸田内閣では「労働者が自分の意思でリスキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくこと」を主張しており[1]、人財管理≒スキル管理ともいえる時代になっているのだ。
注
[1]: 首相官邸「新しい資本主義実現会議」
また、スキルは人財の需要と供給をつなげるための手段でもあることから、スキル=新しい通貨ともいえるようになってきている。とくに専門性の高いスキル、希少性のあるスキルが要求される職務の場合、適切な人財を補充するのは困難であり、スキルギャップが生じやすい。こうしたスキルの価値は上昇していく。
このスキルギャップを埋めるために、企業はフルタイム勤務の正社員だけでなく、パートタイマー、契約社員、フリーランスなど、より柔軟なワークフォースへと移行しており、多様な人財のスキルを把握・管理することが求められている。