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人事労務事件簿 | #42

フリーランスへのハラスメントにつき安全配慮義務違反があると判断(東京地裁 令和4年5月25日)

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 自分・自社の優位な立場を利用して行われるセクハラ・パワハラは、非常に卑劣な行為です。社内の部下・後輩などに行われるだけでなく、社外の取引先・発注先などに行われるケースも絶えません。今回紹介するのも、業務委託したフリーランスに対し、委託元企業の社長が立場を悪用してセクハラ・パワハラを行った事案です。社長は否定しましたが、裁判所はセクハラ・パワハラを認定しました。本稿では、その根拠・判断基準がどこにあったのか、ご確認ください。

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1. 事件の概要

 本件は、原告(以下「X」)が、被告会社(以下「Y社」)に対し、同社との間でWebサイトの運用等に係る業務委託契約を締結し、当該業務を行ったにもかかわらず、Y社から報酬が支払われないと主張して、準委任契約に基づく報酬請求などを求めました。

 さらに、Y社代表者(以下「代表者Z」)からハラスメント行為を受けたと主張して、代表者Zに対しては不法行為に基づく損害賠償請求、Y社に対しては安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求として、連帯して慰謝料などを求めました。

 今回は、さまざまな争点の中からセクハラによる不法行為および安全配慮義務違反について取り上げます。また、本稿では、代表者ZによるXに対するセクハラの具体的な内容は省略しています。

(1)当事者等

 Xは、平成7年生まれの女性であり、平成31年3月当時、美容ライター、コスメコンシェルジュと称して、個人のホームページ(以下「X HPJ」)を開設していた者です。

 Y社は、エステティックサロンの経営等を目的とする株式会社であり、東京都中央区において「エステB」という名称の店舗(以下「本件店舗」)を経営しています。

 代表者Zは、40歳前後(令和2年当時)の男性であり、Y社を設立し、その代表取締役を務めています。

(2)本件店舗における施術内容等

 本件店舗は、手技やEMS[1]等の機器を用いて施術を行う女性専用のエステティックサロンであり、代表者Zが自ら全ての顧客に施術を行っています。

 本件店舗は、居間およびサービスルームから成る居住用マンションにおいて営まれています。その間取りは、居間をカーテンで仕切って設けられた個室2つと、ドアのある個室1つの合計3つの個室があり、各個室にベッドがそれぞれ1台設置されています。

[1]: 皮膚に直接貼付したパッドを通じて電気刺激を直接筋肉に与えることで筋肉を動かし、トレーニングを行う機器。

(3)Xと代表者Zとの交渉と執筆の合意

 代表者Zは、平成31年3月9日、X HPJの問い合わせフォームを通じて、Xに対し、Y社のホームページ(以下「Y社HP」)に掲載するため、「本件店舗における施術を体験したうえで、体験談や感想を執筆する仕事を依頼したい」旨のメールを送信しました。

 1文字当たりの単価や記事の文字数等について交渉の末、Xとの間で、Xが本件店舗の体験記事を執筆してY社HPに掲載するとともに、X HPJにもXの執筆記事を掲載することとし、記事の内容等については同月20日に本件店舗において打ち合わせをすることを合意しました。

 Xと代表者Zは、同日、本件店舗において初めて対面し、Xが執筆する記事の内容等について打ち合わせを行い、Xが自らの体験をもとにして他社の店舗と本件店舗を比較した記事(以下「本件記事」)を執筆することを合意しました。

(4)代表者Zによるセクハラ

 平成31年3月以降、代表者Zは、Xに対してさまざまなセクハラ行為を継続的に行いました。

(5)Xのパフォーマンスに対する不満

 令和元年6月から、代表者ZからXに対する要求度合いが上がってきました。

 当初はHPへの記事掲載でしたが、1日1回ペースの上質な記事掲載およびSEO対策を施した記事で集客につながるもの、という内容に変更になりました。

 Zはこれに伴い、業務委託契約の期間および条件を変更し、双方で合意しました。

(6)Y社との団体交渉等

 Xは、令和元年10月下旬頃、フリーランス向けの日本出版労働組合連合会ユニオン出版ネットワーク(以下「出版ネッツ」)に、Y社による報酬の未払等について相談し、出版ネッツに加入しました。

 Xは、11月11日、代表者Zの行為について築地警察署に相談をしました。

 そして、出版ネッツは、11月14日、Y社に対して団体交渉を申し入れ、12月16日に1回目の団体交渉が、翌年2月21日に2回目の団体交渉がそれぞれ行われました。

 Xは、X訴訟代理人弁護士らを通じて、Y社に対し、代表者Zによるセクハラに当たる行為(以下「セクハラ行為」)を理由とする慰謝料および未払いの報酬を請求しました。

(7)Xのメンタル不調

 Xは、令和2年1月16日、Cメンタルクリニックを受診しました。

 令和元年10月頃から不眠、過眠、仕事が手につかない、嫌なことを思い出すと動悸がする、重要な予定の前に頭痛や微熱が出るという状態が続いている旨を訴えました。

 令和2年2月8日、病名がうつ状態であり、不眠、憂鬱気分、集中困難、前職のことを想起すると動悸やふるえが出現する等の症状を認め、今後も当分の間、通院加療を要する旨の診断を受けました。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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