DX人材の育成に悩んだらデザイン思考を取り入れよう
さて、ここからは今回の本題である「デザイン思考をリスキリングの動機形成に役立てよう」という話に入っていく。
デザイン思考とは、デザイナーがデザイン業務で使う思考プロセスを活用し、ビジネスなどにおける前例のない問題や未知の課題に対して、最もふさわしい解決を図るための思考法・マインドセットである。目まぐるしくビジネス環境が変動するVUCAの時代において、顧客に対する価値提供を考えるための有効な手段として取り入れている企業は多い。そして森氏は、デザイン思考はDXスキルのリスキリングにも役に立つのだと強調する。
「『デジタルスキル標準』の『ビジネス変革』のカテゴリーの中で、デザイン思考のフレームワークが重要なスキルとして一覧化されています。もともと、弊社が提供するDX研修でも取り扱っていたのですが、国が後押ししていることで、デザイン思考によって『DX人材を育成する際の動機形成が難しい』という課題に突破口が開けると感じました」(森氏)
DX人材になるためには、デジタルスキルとビジネススキルの両方を鍛える必要がある。つまり、ビジネスに興味のないIT畑の人はビジネススキルを鍛え、ITの知識がないビジネス畑の人はデジタルスキルを鍛えなければならない。デジタルとビジネス、まったく異なる2つのスキルを学ぶ意識を高めることがDXスキルのリスキリングの難しさなのだと森氏は述べた。
そして、社員自らが両方のスキルの重要性に気づくために、デジタルとビジネスの視点を交差させられるのがデザイン思考なのだという。
デザイン思考を用いたリスキリングの動機形成
ここで森氏は、DXスキルのリスキリングの動機形成に効果的な、デザイン思考を用いた手法を紹介した。
それは、「DXの視点から自社で新しいビジネスをつくってください」「身の回りの業務課題をDXの視点で改善してください」「DXの視点を取り入れながら顧客に対する新しい価値をつくってください」のような、テクノロジーとビジネスの架け橋となるようなテーマのワークショップである。
ワークショップで生まれたDX推進のアイデアを通じて、ビジネス畑の人やIT畑の人がお互いの視点を学び合い、将来的に自分に必要なスキルを発見、リスキリングの動機につながるという仕組みだ。