人事領域でも高まるAI・データ利活用の重要性
デロイト トーマツ グループにおいて、クライアント企業の戦略の立案から実行までを一貫して支援するデロイトトーマツコンサルティング。同社で「組織・人事」関連のコンサルティング業務に従事する松井氏は、ピープルアナリティクスの先端事例とベストプラクティスと題して3つのテーマについて語った。まずは、人事領域におけるAI・データ利活用だ。
「AI・人材データ利活用の重要性の高まりは、主に『DXの推進』『多様な人材ニーズによる流動性の高まり』『ジョブ型人事制度の導入や働き方改革の加速』『人的資本情報開示の世界的な潮流』の4つの文脈に分けられます。そして、これらの文脈の中で、情報をいかに扱うか、それを社内でどう活かしていくのかが企業の中で重要になっているのです。
また、データを活用して人事機能全般の高度化を図ることで、経営や事業戦略とのアラインを高めていくことも求められています。言い換えれば、経営や事業課題の解決に合わせて、人材・組織の課題を解決していく必要性が高まっているということです」(松井氏)
データ活用の主なテーマは6つ、着手しやすいのは?
松井氏は、人事領域においてAI・人材データ利活用を進めていくうえでキーとなる「データ活用による人事・経営課題解決モデル」を紹介した。これは、高度なタレントマネジメントシステムにより、データの利活用を経営や事業に資する形にするモデルだ。
このモデルは、異動・配置でつくったデータが育成で使え、育成でつくったデータが採用に活かせるなど、ループ状になっている。「この“情報の還流”を生み出し・管理する仕組みをつくることが肝となってきます」と松井氏は強調した。
また、労務行政研究所の調査によると、データ利活用の1つに位置付けられる「ピープルアナリティクスの導入」は、7割以上の企業で推進または着手に向けた調査が進められているという。一方で、デロイト トーマツにて実施した「人的資本情報開示に関する実態調査」によると、「データの収集・分析を一元化するシステムやツールが整備されていない」「データの収集・分析ができる人材・組織が整備されていない」など、多くの企業でデータ活用基盤や人材・組織面の課題が顕在化している。
そうした中で、松井氏が推奨しているのが、比較的データがそろっている領域から着手するやり方だ。
「比較的取り組みやすいのは、採用・育成・配置・退職の領域です。とくに、活躍人材の発掘・育成促進というテーマは、日本企業の中にかなりの情報があるはずです。ぜひ、データが多い領域から取り組みはじめていただきたいと思います」(松井氏)